新しいフライパン

 台所用品は一度揃えると、よほどのことがない限り同じものをずっと使いつづける。使えば使うほど手に馴染み、多少のキズや汚れも味わい深くなる。なかでも特に鍋とフライパンは台所になくてはならない器具で、この二つがあればほとんどの料理ができるかもしれない。

 これまで使っていたフライパン、まだ5年ほどしか経ってないのに底が歪んで波打つようになった。野菜炒めなら大丈夫だが、目玉焼きやギョーザは油が均等にならないのでうまくいかない。それほど酷使してきたつもりでもないのに、たった5年で変形しまうとはガッカリだが、思い返せば1000円ほどの安物だった。

 変形した状態のままにしておくと、だんだん使用頻度が減ってきて、とうとうフライパンは裏返されたまま。フライパンを使わなくなると料理の幅がとても狭くなることを実感する。スーパーに並ぶ出来合いのものばかりで食事を済ますことが多くなり、なんとも味気ない。生活する上で、食事のあり方がいかに重要な意味を持つか分かるというもの。ただ食べればよいわけではなく、味わわなければダメなのだ。

 新しいフライパンを買おう。スーパーの生活用品売り場にいっぱい並んでる。ピンからキリまで揃ってる。安物は止めた。それでも5〜6000円もする高級品に手は出せない。3000円ほどのフライパンにしよう。

 対応電熱では、ガス、電気コイル、ヒーター、そして電磁器(IH)まで使用可能な万能型フライパンが丈夫そうだが、どれもが重い。IHで調理などするわけがなく、ガスだけで充分。ガス専用のフライパンを手にすると、とても軽くて使いやすく感じる。3000円ほどのガス専用フライパンを選んだ。これなら長持ちするだろう。

 フライパンが新しいと使いたくてしようがない。さっそく目玉焼きを作る。まったくこびり付かず、易々とできて気持ちがいい。たかが目玉焼きだけど、とても美味しいと思う。いろんな料理に挑戦してみたくなる。新しいフライパンが人生を変えるかもしれないーーなんて、ちょっと大袈裟か。