人口減少より人口形態が問題

 様々な問題を抱える日本では、特に人口減少が深刻で国の将来を危ぶむ声が多い。しかし、世界全体を俯瞰すれば人口は増加、特にアジア、アフリカ、中南米が顕著で、今世紀半ばには100億人を超すと予想され、こちらの方が余程深刻な問題だと私は考える。

 気候変動や地域間の紛争に加え、急激な人口増加で水や食料を中心に資源不足が懸念される21世紀の世界。にも関わらず、日本や一部の「先進国」では人口減を心配して、何ともアンバランスな事態だが、人口の減少と増加を表面的に比較し問題を単純化しない方がいい。

 日本の人口問題は減少の事態そのものよりも、人口形態にこそ目を向け対策を練るべきで、ピラミッド型になったり逆ピラミッド型になったりと激しい変化が問題の本質である。いかにして未来を「寺の鐘」のような安定した人口形態に創っていくか。その形が維持できれば日本の人口、8000万人でも全然構わない。

 いや、日本の人口が8000万人どころか、安定した「寺の鐘」の人口形態を維持できれば、5000万人程度でも一向に問題ないと思う。なぜなら、むしろそれくらいの方が、狭い国土ながら四季折々の自然がより豊富になるし、海外に依存せず自給自足できる本当の意味で強い国になれるかもしれないから。

 人口減少を心配するあまり、再び「産めよ増やせよ」に転じたらまた失敗する。現在のインドなど典型的なピラミッド型で、いずれインドも現在の日本のようになる可能性は高い。人口が増え過ぎた中国は一時期「ひとりっ子政策」を推進した挙句、その失敗から現在は極端に凸凹な人口形態になっている。

 人口増減を歪にする一番の原因は戦争であるのは言うまでもないが、「経済成長」という妄執に囚われてしまうことも大きな要因だ。さらに、政治や企業、そして家庭において家父長制が色濃く残る社会の中、自由や平等に目覚め、自立を目指す女性が古い因習に抵抗したくなるのは当然、男性の支配下で安心して子供を産み育てられるはずがない。差別・格差の是正こそが安定した人口形態を創るのだ。