厚化粧に騙されまい

 ネットやテレビで人物の写真や映像を見る時、非常に違和感を抱くのは私だけではないと思う。男女を問わず皆が見栄えのため派手にメークアップし、シミやホクロひとつない顔で登場してくる。

 人気タレントも、ニュースのアナウンサーやキャスターも素肌がマネキンのようにテカテカ光り、キレイすぎてかえって不気味である。メークアップ前と後があまりに違うとしたら詐欺のようなもの。

 私は一人の異性愛者の男性としてスッピンの美しい女性がなにより好きだ。無理に化粧などしなくていい、自然のままがいい。スキンケアは大切だが、それは化粧するのとは別問題。

 恋愛と結婚の決定的な違いとは、正に化粧した顔とスッピンの顔の違いなのだろう。外で時間を過ごす恋愛期間は化粧と付き合うということ。対して結婚すれば同じ屋根の下で長時間スッピンと付き合わねばならない。恋愛と結婚の大きな落差がここに如実に現れ、人々は実態を知ることになる。

 化粧で本当の姿を隠したがる傾向は、まるで日本経済の現状と重なる。これまで日本経済を支えてきた産業だった、繊維、造船、半導体、電器…が時代の変遷とともに悉く衰退。自動車業界さえEV化に乗り遅れ、もはや風前の灯火。観光だけが頼りだが、それも新型コロナの蔓延で、観光産業そのものの脆弱性を見せつけた。

 スッピンという現実をじっくり見つめ直すべき段階に入ったにも関わらず、いつまでも厚化粧して経済大国を装いたい日本。荒れた素肌をいくら厚化粧で隠しても益々醜くなるばかり。

 厚化粧で取り繕う必要などなく、素肌の健康を取り戻すために別の方法を探さねば日本は沈没、ガラパゴス化は加速してゆくだろう。大国の仮面を捨て、自然や環境に立脚した21世紀型経済へと大胆に舵を切るべきである。