正反対でも表裏一体

 孤独な人には大きく分けて二つのタイプがあるようだ。一つは、身の回りの事はひとりで出来るし、誰にも頼らず日々を過ごせるタイプの人。もう一つは、身体に障害を持つわけではないが、他人と会うのが怖くて外に出られないタイプの人。

 前者が自立してる人、後者は引きこもる人、世間ではそのように区別してるような気がする。確かに同じ孤独な人でも前者と後者とでは表向き全く違うので、前者はしっかりした孤高の人のように見られ、後者はだらしないダメな人と判断されやすい。

 しかしこの両者、正反対のようだが実は表裏一体で、両者に共通するのは依存する対象が極端に少なく狭いこと。そしてこの両者はじつは似たような言葉を口にしたがる、「大丈夫です」「気にしないでください」。

 さらに前者は自立してると思い込んでるからプライドが高く、また後者も他人からの視線を気にして怖れるあまり、両者とも「教えて」「助けて」と素直に口に出すことがなかなかできない。

 自分は自立してしっかりしてると自惚れる人は、働きもせずいつまでも親だけに依存して引きこもる人など、どうしようもないダメ人間で自分とは真逆の遠い存在だと認識してるかもしれない。

 だが、この両者の距離は意外と近い。人生は、いつ何時、何が起きるかわからず、病気やケガ、事件や事故、リストラ、倒産、離婚、死別…等々、人生の歯車を大きく変える突然の不幸に見舞われることは、どんな人間に対してもいくらでも起こりうる。

 昨日まで健康を維持し、仕事も順調、順風満帆な人生を送っていようとも、何かの要因で心的ショックに襲われ今日になって一気に転落、不幸のどん底に突き落とされる…そんなことはいくらでもあり得るのだ。そして、キレイに整理整頓されていた部屋も、気力が失せると短期間でゴミ屋敷化してゆく。

 40代後半から50代、そして60代前半の働き盛りにかけ、孤独死する人が目立つという。「下流老人」「絶望老人」「老後破産」「孤独死」それらは誰にでも降りかかる現象で、決して他人事ではない。

 イザとなった時、外に向かって救助の声を発せられるかどうか、意地を張るばかりでなく、弱音を吐き、愚痴をこぼすことができるかどうか。心の柔軟性をもっと身に付けなければ、社会的どん底へ急降下してゆくことにもなりかねない。