アメリカの本音

 シリア情勢がますます不透明になってきた。アメリカ(米国)が単独で軍事介入をしたがり、火に油を注ぐ形になりつつある。同盟国イギリスでは議会が否決したので、アメリカも一応は議会承認を経て最終判断を下す手続きだが、とはいえ最初から結論ありきである。

 軍事介入が前提なので、オバマ大統領はなんとしても上・下院から承認を得て空爆に踏み切りたいらしい。「人民の、人民による、人民のため…」というリンカーンの言葉を引用しながら戦争にのめり込もうとするオバマ大統領を見ると、あのノーベル平和賞は一体何だったのかと思うし(ノーベル賞なんてインチキ、特に平和賞は)、オバマもブッシュと同列なことが証明された。

 それにしても、なぜアメリカは常に戦争をしたがるのか? アメリカが口にする「自由」「正義」「民主主義」は口実に過ぎないことは誰もが知っている。しかし、アメリカの隠された本音がメディアを通してまったく伝わってこない。

 科学技術は軍事面で常に最先端を走ってきた。世界一の経済大国であるアメリカではIT関連を含めて軍事産業が屋台骨である。最新兵器が次から次へと生産され、そして作ったからにはそれを試したくてしょうがない。つまりアメリカは最新兵器を使用する理由付けのため無理やり悪を想定し、悪の成敗のため「自由」「正義」「民主主義」の言葉を乱用しながら世界の警察官気取りで、自国の軍事産業を潤したいのである。

 その時々の最新兵器とは、太平洋戦争における広島・長崎に投下された原爆が典型で、その後、朝鮮戦争でのジェット機ベトナム戦争では新型のヘリや爆撃機クラスター爆弾、ナパーム弾、枯れ葉剤…、イラク戦争湾岸戦争を含む)では、パトリオットミサイル劣化ウラン弾バンカーバスター地中貫通爆弾、GPS全地球測位システム)、ステルス爆撃機…等々、挙げ出したらきりがない。

 表向きアメリカは「シリア政府軍が化学兵器大量破壊兵器)を使用したので人道上許せない」と訴えるが、そのままどうして鵜呑みにできるだろう。過去の経緯を見る限り、もっとも非人道的なのは、カネと権力をほしいままにするアメリカの支配層ではないか。

 アメリカ議会では共和党オバマの軍事介入に否定的だが、理由は「限定的ではダメ、アサド政権を倒すまで徹底しろ」というのだから恐ろしくなる。アメリカの本音が丸見え、尊い人命が最新兵器の実験台にされたのではたまらない。