気候変動の怪

 南米ペルー沖の海域でラニーニャ現象が発生したことから、日本で今度の冬はかなり厳しくなるとの予報が出ている。産業革命以降、人類の二酸化炭素大量放出により温暖化が進めば地球全体が暑くなると単純に考えがちだが、どうもそういうわけでもないらしい。

 ラニーニャ現象は海面温度が低くなる意味で、エルニーニョはその反対の呼称だ。海面温度の影響で大気や海流に変化が生じれば確かに気候変動を起こすであろうことは容易に想像がつく。

 学校での地理の授業を思い出す。温かいメキシコ湾流が大西洋を北上し、それで日本よりも緯度のかなり高いイギリスやノルウェーが日本と同じ気候帯域に入っていることを習った。もしメキシコ湾流がストップすれば、イギリスなどはあっという間に寒冷地と化すだろう。

 温暖化で大海の暖流が滞るようになれば、地球のあちこちで寒冷化が進むかもしれない。温暖化の影響で逆に寒くなるとしたら何とも皮肉。ともかく暑くなったり寒くなったりの気候変動が極端になるのは間違いない。

 先日英国スコットランドグラスゴーで開催されたCOP26。地球温暖化を阻止するため各国で様々な意見が交わされたらしいが、簡単に要約すれば「産業革命以降の温度上昇を1.5℃までに抑えることを努力目標とする」という何とも曖昧な共同声明で落ち着いた。

 何もしなければ今世紀中に地球表面は3~4℃上昇するらしいから、そこを何とか1.5℃の上昇に抑えようと格好つけたというわけだ。とはいえ、大体想像できると思うけど、この「努力目標」という表現が曲者、これは結局「何もしない」と宣言してるようなもので、まったく期待できない。

 それにしても、かりに先進国や途上国など各国が最大現努力したとしても、それでも1.5℃の上昇は認めざるを得ないという現実は、これはもはや手遅れではないかと思ってしまう。勿論、だからと言って放置するようではマズイのだが…。産業革命以前に戻ることなど不可能。気候変動と共に誰もが生存できる術を新たに考え出さねばならないようだ。