歪な社会構造

 標準的な夫婦が老後生活に従来の年金だけでは足りず、さらに2000万円ほど必要だとする金融庁の発表が大問題に。「年金100年安心プラン」を推し進めてきた安倍政権は大慌て、金融庁に責任転嫁して逃げ回っているが、金融庁が発表した数字自体は決して間違ってはいない。

 いや、間違ってないどころか、不足金額はもっと増大するはず。なぜならケガや病気や介護、さらに自宅の修繕・改築などにも相当な金額が必要とされるはずだが、発表された2000万円には含まれていないのだから。

 そして、もっと深刻なのは、若い人を中心に年金未納者が増えていること。派遣労働やアルバイトなどで毎日の生活をかろうじて維持してる労働人口約4割の非正規社員にとり、国民年金の月15000円は大きな負担であり、払いたくても払えない大勢の人が存在する現実。

 仮に、たとえ丸々40年間国民年金を納めても、それでも貰える金額は月にしてたった65000円だから、これじゃ老後にまともな生活などできないことくらい分かる。多少生活に余裕がある人でも、払うだけ損という気持ちなるのは十分理解できる。

 日本には今現在国民全体の預貯金がおよそ1800兆円ほどあるそうだ。少し前まで1500兆円と言われていたからこの何年かで大幅に増えたことになるが、ただその80%を高齢者が抱え込んでるという。つまりそれだけ高齢世帯の増加が予測より進んでるということ。

 あまりに歪な社会構造にお先真っ暗になるが、高齢者の預貯金をなんとか若い世代に回せないか。金持ちのお年寄りは自分の財産を子供や孫に遺産として残すのだろうか。ともかく、富裕層への大幅な増税は勿論、それだけじゃなく社会構造の大胆な政策転換・制度転換を実行しない限り、大地震どころじゃなく、もっと凄まじい形で社会全体が崩落しかねない。

 目先の経済や大企業優先に当てられてきた政策のツケが、いよいよ露わになってきたわけで、日本社会の今後30年間、そしてそれ以降はどうなるのだろう? 経済成長という幻想から皆が目覚めない限り、日本が奈落の底に沈むことは間違いない。