病原菌より怖い

 たとえ肌寒くとも三月の声を聞くと、いつもはまず心が身体より先に春を受け入れるが、観測史上もっとも暖かかった今冬のせいで、なにより肌感覚で春の到来を知る今日この頃。青空が広がり、風も吹かず、とても静か、部屋の窓から外を眺めるかぎり、気持ちいい穏やかな陽気だ。

 しかし、外は花粉が舞い、世間は新型コロナウイルスで大騒ぎ、好天にもかかわらず外出する気には全然ならない。本当は河川敷をのんびり散歩しながらバードウォッチチングでもしたいけど。

 街全体がゴーストタウン化してる。先週馴染みのBarに行く途中、金沢の繁華街片町や香林坊界隈を歩いてみたが、閑散として各店舗はガラガラ、活気はすっかり失せていた。

 メイン通りはいつもなら外国人の観光客とはよくすれ違うのに、人そのものが少なく、他人を除けながら歩くことはなかった。いつもの店に入るが普段は混んでるカウンター席の椅子が寂しそう、ママやマスターに話を聞くと、客が来ない日は閉店時間を早めると言う。

 日本社会全体の雰囲気がガラリと変わった。政府が要請する自粛も予定の二週間で終わりそうな気配はなく、さらに長く続きそうで、経済の落ち込みは想像以上になると思われる。中小零細企業や高齢者、ギリギリで生活してる人は生死の瀬戸際だ。

 企業も体力ある大手は大丈夫だろうが、多くの中小零細は立ち行かなるかもしれない。安倍首相が真っ先にパニックに陥り、周りに相談もせず勝手に決めるので混乱に拍車を掛ける。検査体制の不備から新型コロナウイルス感染者数の実態すら把握できないなんて…これまでの政策の失敗のツケが非常時には一気に噴出する。

 嘘が蔓延、デマが飛び交い、差別が増幅される、さらに便乗悪徳商法。これらの方が病原菌よりよほどやっかいで怖い。