経済は成長より安定

 あくまで経済成長を目指し、強い日本を復活・維持させたいのがアベノミクスらしいが、しかし少子高齢化が進む日本でどうしてそれが可能だろうか。このままでは50年後、1億2500万人から8000万人へと、じつに人口が2/3に減少する。そんな状況の中、国の経済力を現状維持どころか、さらに向上させようとしても無理、誰が考えても不可能だ。

 では、どうすればいいのか。人口減少をストップさせ、労働力を維持させるためには外国からの移民を積極的に受け入れるしかない。しかし日本社会の現状を見る限り、日本人の多くは外国人と共存・共有することはできないだろう。それどころか彼らへの差別・格差を拡大させ、結局は国内に日本人と外国人との壁を分厚く築くことになりかねない。

 現状で日本人が外国人と共存・共有できないと思うのはヘイトスピーチデモなどを見れば分かる。世界に恥を晒しつづけるヘイトスピーチが、朝鮮人・中国人に対してだけでなく、さらにアフリカ系やアラブ系や東南アジア系の人々にも及ぶ。

 また、オウム真理教事件のその後の傾向を見ても明らか。幹部が事件を起こしたことで、オウムの信者全てを怪しむ雰囲気を世論は作ってしまった。オウムに限らず、ほんの一握りの異端者を見ただけで、全体までを異端と見たがる悪いクセがまだまだ日本社会には根強く蔓延している。人間を個人として見ることが日本ではなかなかできない。

 安倍政権とその取り巻きの本音は、日本に外国人など定住してほしくない、日本人だけの国にして国威発揚、威張りたいのであり、元々外国人を受け入れる柔軟な姿勢など持ち合わせていない。だから日本の人口減を止めることはできず、日本は衰退するのだが、彼らは決してそれを口にしない。

 繁栄を維持したいがため1000兆円以上の借金をしてしまった日本。もっと借金を増やすつもりなのか。借金まみれの贅沢など虚構であることぐらい誰だって分かる。日本は砂上の楼閣でじつに危ういのだ。「成長」という幻想にマインドコントロールされたまま破滅の道を突き進むばかり。

 破滅が嫌なら現実を直視し、縮小へと方向転換しなければ。借金を減らして地を固めること。そうしなければ日本はいつ崩壊してもおかしくない。縮小することは「衰退」だが、衰退という言葉に抵抗があるなら、成長を止めることで、せめて安定を目指すべきだ。