人間と自然界

 先週も本当に暑かったな。8月下旬にもかかわらず石川県内各地で過去最高温度を記録した。かほく市では39.2℃の歴代最高(24日)、金沢は5日連続の猛暑日でこれも新記録。今夏は過去のどの夏よりも暑かった夏として記録されるだろうが、しかし自然破壊と温暖化でさらに暑い夏が来年以降も予想される。

 ほとんど毎日エアコンは付けっぱなしの状態、そして一晩中蚊取り線香のお世話になりっぱなしだった。9月に入ってもこの暑さがつづくとしたら「ホントもう勘弁してください」という心境に陥る。

 幸い、こんな暑い最中でも夜には鈴虫が鳴き始め、日の入りは次第に早くなり、秋の気配は多少感じる。19時を過ぎる頃は辺りがかなり薄暗くなり、半近くなるとすっかり闇に包まれ、河川敷の散歩も楽しくない。私自身は9月から生活習慣を変え、早起きしてバードウォッチングを再開したいと思っている。

 ところでネットで国際ニュース(AFP)を見ていたら「セミの声がうるさい、仏南東部で観光客が村長に苦情」という記事が目に入り、読んでみると一部の観光客はセミの声が朝寝の邪魔になりうるさいので殺虫剤を入手しようとしたらしい。セミの声はいかにも夏を感じさせてくれる風物詩、だからこのような記事を読んで私はとても悲しい気持ちになった。

 さすがに当地のフェレロ村長は「セミの声はプロバンスのBGMのようなもの、伝承されてきた一部」だと説明し理解を求めたらしいが、観光客は受け入れようとしなかったという。

 私はこのワガママな観光客が一方的で特殊な変人ではなく、むしろ今現在、地球上で暮らす人間の主流ではないかとさえ思ってしまう。産業革命以降、人類は「生産性向上」を目指し、自分が楽しむためには自然環境を破壊してもかまわないという誤った方向を今も進んでいるような気がする。

 今夏の異常な猛暑を経験しながら、もし夏のセミの鳴き声がうるさいと殺虫剤で駆除するなら自然界は完全に破壊されるだろうから、夏だけに限っても、益々暑さは増すかもしれない。セミの声を楽しめる余裕を人間が失うことは、それは人間が自ら人間を止めるというに等しい。