売春問題の本質

 「売春は歴史上もっとも古い商売」という言い回しもあり、しかも売春はどんな人間社会にも存在する。売春は無くならない、だから合法的に認めるべきとの意見まである。

 しかし、この「売春」という言葉はいかにも一方的である。売春が成り立つには買春があるからで、むしろ「買春」こそ問題視すべきではないか。これは女性の問題以上に男性の問題だろう。

 「売春防止法」という法律はあるが買春に関する法律は児童に対してのもの(児童買春罪、児童ポルノ所持罪、児童ポルノ提供・製造罪…)以外では聞いたことがない。つまり「売春防止法」に対する「買春禁止法」がないのだ(どこかにあるのだろうか)。これなど男女差別の典型的な一例で、男性優位社会を如実に表している。

 少し前、東京のメトロ千代田線の女性専用車両に男性数名が乗り込みトラブルになったニュースが話題になった。男性側は「女性専用車両男性差別」と訴えていたらしいが、この男性たちは物事の本質がまったく分かっていないようだ。

 「女性専用車両」は表層的現象に過ぎず、なぜそんな車両が登場したのかを考察しなければ。いかにこれまで多くの女性たちが電車内で痴漢行為に遭遇してきたか、そして多くの女性たちが泣き寝入りしてきたか。

 重要なのは、表層だけを捉えて、あるいは一方だけを見て判断しないこと。「売春」も「女性専用車両」も、そして「結婚制度」等にも、人類史における強者と弱者の構造が組み込まれている。

 日本では結婚すると夫婦同性になるが、そのうち96%までの夫婦が夫の性を名乗ってしまうという現実…ここには根深い男女差別が巣食っており、男性に比べ女性の権利が蔑ろにされて来た証だ。

 女性の権利が拡大し、男女平等が実現してゆく中で、例えば国会議員の数が男女同数になり、夫婦別姓が実現し、男女の給与差が無くなり、家事労働育児が男女で平等に受け持つことが当たり前になるなら、「売春」で生きていくしかない女性の数は極端に減るだろうし、「女性専用車両」も無くなるだろう。勿論、買春したがる男性も激減するはずだ。

 念を押すために書いて置かなければならない。男性優位社会とは、女性だけでなく男性にとってもじつに窮屈で不幸な社会なのである。