人間とAI の共存

 「AI(人工知能)は人間になれるか」という問題は、ある意味、もっとも興味深い問題のひとつかもしれない。人間になれるかどうかは「逆説」が理解できるか、理解するだけじゃなく、体感できるかどうか。

 逆説の意味は理解できたとしても、それを体感しない限り、自分のものにすることはできない。これはもちろん一人ひとりの人間にも当てはめられるが、少なくとも人間は、どんな人間も逆説を体感できる可能性を秘めている。

 「体感できるかどうか」ーー問題はまさにここにあるわけで、AI は逆説を体感できる可能性を秘めることができるのか。私の現時点での結論は、AIはできないと思う。AI は限りなく人間に近づくが、しかしAI は決して人間になれないのではないか…。

 ところで、AI が益々進化することで人間と対立し、いずれAI が人類を支配するのでは…と心配する意見があるが、安易に人間とAI との対立を煽らない方が懸命だろう。あくまで人間とAI のより良い共存を探るべき。

 人類の歴史は、強者と弱者との構図で推移してきた。すなわち、世界各地で支配する側と支配される側に区別されて来たわけだし、当然、人間世界には善人もいれば悪党もいる。同じことはAI の世界でも起こるかもしれない。

 もし、AIが人間とほとんど区別できなくなったとしても、それ自体を心配する必要など全くない。なぜならAI はほとんど人間になったと思えばいいだけのことで、問題は人間世界と同様、AI の世界にも悪党のAI が出現することだ。

 悪のAI が社会を支配しようと企むなら、善の人間は、同じく善のAI と協力して立ち向かわなければならないし、もちろん、悪の人間が独裁を目指すようなら、善のAI は善の人間と共に独裁者を倒さなければならない。