「強要」という完全なる間違い

 自分が信じることを正しいと思い込むことは勝手だが、しかし、それを他人に押し付けることは完全に間違っている。こんな当たり前のことを理解できない大人が以外と多いことに驚く。

 森友学園の籠池理事長が幼稚園児に「教育勅語」を暗誦させていたことで、それのどこが悪いか、と本人は開き直ったそうだが、これなどもっとも悪質な押し付け「他人へ強要」の典型だろう。

 文学や美術、音楽や映画など、それら人間の創造物に素晴らしい作品はいっぱいあるが、だからと言って、それらを無理やり読ませ聴かせ鑑賞させようと人々に強要するなら、優れたそれら芸術作品も、その存在自体が変質してしまう。

 見渡せば、特に宗教や思想で「これが正しい」と信じ込む者同士の争い事が絶えず、結局、同じ強要したがる者同士が喧嘩してるようにしか見えない。もう、そろそろ、人類は次の段階へ進まなければ。

 現在を生きる私たちは、正しいかどうか自ら判断できる「個性が育つ環境」こそを未来に生きる人々のために整えてあげる必要がある。

 世界も日本も、社会がこれほどデタラメな状況はかつてなかった。ひとつの原因がインターネットの発展にあるのかもしれず、有名・無名を問わず、好き勝手に意見を発信できるようになったことの影響は大きい。しかし、大多数の人々が自由に意見を述べられる機会を得たことは素晴らしいことである。

 ネットの進歩は後戻りしない。だからこそ、受け手でもある私たちが、何が偽物で、何が本物なのかを見極める力量を備えたいし、逆に、単なる思い込みを事実のように発信することは厳禁、さらに「正しい」ことを決して押し付けることのないよう、自らを戒めたい。