摩訶不思議なこと

 世の中にはありえないはずの摩訶不思議なことが起きる。私は幽霊や超自然現象などまったく信じないが、そんな私でも我が身に降りかかった説明できない事実は受け止めるしかないようだ。

 東京時代、新宿歌舞伎町でBARを経営していたとき、業務用の小型冷蔵庫を購入しようとしたが、小型とはいえ業務用なのでかなり高く10万円ほどした製品を、それでもなんとか値切って8万5千円ほどで買い付けた。

 金銭に余裕がなかったから8万5千円の出費はかなりキツく、それでも購入した以上、支払わなければならない。じつは当時、私は財布の中を覗きながら戦々恐々としていた。請求書がいつ届くかと内心ビクビクしていたのだ。

 ところが、ところが、その請求書がいつまで経っても届かない。一ヶ月、三ヶ月、半年、一年…過ぎても届かない。二年、三年、経っても請求書が送られてこない。世間の常識では何がなんでも「かならず届く請求書」のはずなのに!?。

 こんなこと、実際にありえるだろうか。製造メーカーや代理店は月々の決算をキメ細かく記入チェックしてるはずで、8万5千円もの金額が未納なら大問題になるはずだ。

 結局、私は8万5千円を支払わず今日に至っている。もうとっくに時効だから正直に告白した。何だかすごく得した気分だが、とにかく未だに不思議でしょうがない(笑)。あの時、私は迷宮の世界にはまり込んだのか、誰かが私に代わって支払ってくれたのだろうか、それとも…???