薄型テレビの値段

 映画好きの私は衛星放送の映画チャンネルを観たくて2年ほど前に薄型テレビを購入した。映画を観るなら画面はなるべく大きい方がいいだろうと20型を選んだ。これまで私のテレビといえば14型〜16型が主で、他人から笑われるかもしれないが私の狭い部屋では20型で十分と思ったのである。

 いつも近くのショッピングモールで食材中心の買物をするが、電器製品の販売コーナーもときどき見学する。それほど広いスペースではないが、家電物なら最新の製品を揃えているので今現在どんな商品に人気があるのか大体分かる。

 驚いた。ズラリと並んだ大型液晶テレビの値段の安さに驚いた。32型で3万円前後、40型以上でも4〜5万円。レコーダー内蔵の32型で6万円。こりゃいったい何だ! 私の20型液晶テレビは6万円もしたぞ。今6万も出せば…、最新の32型が3万? ホントかよ、冗談だろ。

 だんだん腹が立ってくる。部屋の20型を即座に処分して、映画をもっと楽しむために32型か40型が欲しくなった。しかしガマンする。世間の流れに翻弄されたくない。まだ新品同様6万円の20型テレビはこれから長い間愛用するつもりだ。それにしてもこんな短期間で激安になるとは…もし予想できたなら2年前の購入は控えていたはずだ。

 大々的に報道されている通り、ここに来て薄型テレビの値段が急落している。その下落幅たるや想像を絶するほど、いったいどこまで落ちるのだろう。昨年の完全デジタル化によるアナログ電波停止以前と以後とで様変わりしたわけだが、それにしてもこんな急に激変するとは思わなかった。

 あらためて、時代の変化の早さを実感するとともに、先を読む力を養わねばと思わずにはいられないが、とはいえ私のようなノンビリ屋に対応は難しい。それでもだからこそ広い視野と競争に煽られない冷静さが人生には求められることを痛感する。

 ソニーやシャープ、東芝パナソニック、日本の家電メーカのテレビ事業は大苦戦だ。テレビだけでなく、造船も半導体もあっという間に衰退していった。もっと以前には繊維産業がそうだった。5年後、10年後にはどうなっているのだろうか。