ボブ・ディランのノーベル文学賞

 ボブ・ディランが今年のノーベル文学賞を受賞した。彼の文学賞受賞のニュースは全世界を駆け巡り、大きな話題を呼び、賛否を繰り広げた。今現在、彼は雲隠れしてここ一週間ほど連絡がつかないらしい。

 ノーベル賞受賞といっても事務局側が勝手に選んだに過ぎず、受け取るかそれとも辞退・拒否するかは選ばれた当人が判断すればいいだけのこと。受諾するのは当然であるかのような世界の風潮は権威主義に洗脳されている。

 ボブ・ディランの心情を想像するなら、彼はノーベル文学賞の受賞など決して心から喜んではいないはずだ。これまでの彼の半生を振り返るなら、もしこの賞を嬉々として受け取ること自体、矛盾そのものではないだろうか。

 私はボブ・ディランに特別な思い入れをしてきたわけではないが、それでも彼には「反体制」的なイメージを抱いて共感するところは多かった。だからこそ、欧米中心主義のいかにも体制的なノーベル賞など、ボブ・ディランには似合わない。彼には是非辞退・拒否してもらいたい。

 黒のタキシードか燕尾服か知らないが、正装して厳かな雰囲気の中で記念メダルを受け取り、晩餐会では王室関係者と共に豪華な食事を…そんなボブ・ディランなど想像できないし、想像したくもない。

 しかし彼も75歳。2012年には大統領自由勲章(米国)、2013年にはレジオンドヌール勲章(フランス)など、これまで数々の賞を受け取った。ノーベル賞だけ拒絶するのは難しく、雲隠れした彼は葛藤の渦に揉まれている?。