日本はどこへ行った?

 韓国と朝鮮の首脳会談が軍事境界線板門店で実現、昨年までの緊張が嘘のような和気あいあいムードを演出した。文在寅韓国大統領の地道な努力を称えるとともに、金正恩朝鮮労働党委員長が融和政策に舵を切ったことを評価したい。

 しかし、素直に喜べない部分もあり、まだまだ先行き不透明。一番の疑問は、朝鮮の態度が豹変したこと、あまりに急だった。なぜ朝鮮は核開発の中止を一方的に宣言し、相手に握手を求めて来たのだろう。たとえ雑草を食べるしかない状況に陥っても核開発は止めない、と言われていた国のはずだが…。

 朝鮮の本音は、本当はもっと核開発を推進し核技術を向上させたいに違いない。しかし、度重なる地下核実験で地盤は崩落し破壊され、もはや狭い自国内で核実験を継続できなくなってしまった。さらに資金不足も手伝い、もう無理と判断、方針を変えざる得なかったのではないか。

 朝鮮は今、生き残りを賭け必死の外交を展開してる。周囲の関係諸国はその真意を読み取りながら、逆に朝鮮の動向を上手に利用しつつ、朝鮮半島の非核化と安定に向けさらに努力してほしい。たとえどんな本音が隠れていようと、軍事衝突の危険が消え去ろうとしている状況は素直に喜ぶべきだ。

 それにしても日本はどこへ行った? 米国頼り一辺倒で日本は金魚の糞に過ぎなかったが、米朝首脳会談が実現すれば糞としての存在価値も無くなり、周囲を漂うだけで迷子のような存在に日本は成り下がるかもしれない。

 ところで朝鮮半島で南北和平が成立し、もしこのまま順調に推移するなら、今年のノーベル平和賞は韓国の文在寅大統領と、朝鮮の金正恩委員長が同時受賞することは間違いないだろう。

 以前の記事「対話こそ推進すべき」で「ひょっとして今年のノーベル平和賞金正恩か?」と書いたが、本当に実現しそうな運びになりつつある。米朝首脳会談もうまくいけばトランプ米国大統領も併せて受賞するかもしれない。しかし、文在寅大統領はともかく、独裁者の委員長と我儘大統領の平和賞受賞となれば、ノーベル賞のアホらしさがものの見事に証明される。