シン・ゴジラ

 話題の日本映画「シン・ゴジラ」を観た。これは「平成ガメラシリーズ」以来、およそ20年振りに登場した傑作怪獣映画だ。1954年の第一作に原点回帰した2016年版「ゴジラ」と言っていい。

 1954年版「ゴジラ」はビキニ環礁の米国水爆実験の犠牲になったマグロ漁船第五福竜丸の問題が下敷きになっていたが、2016年「シン・ゴジラ」は3.11の東京電力福島第一原発事故の影響下で製作されたことは確かである。

 贅肉を削ぎ落とした骨太の物語がテンポ良く進行する。登場人物が多く、セリフもやたら多いにもかかわらず、観客は戸惑うことなく最後までスクリーンに惹きつけられる。

 特に前半、想定外の巨大不明生物(ゴジラ)の突然の出現により政府官邸が右往左往するところはリアル、説得力があり実に面白い。しかし後半、ゴジラへの核攻撃が国連で決議され、それと並行してゴジラ凍結作戦も進行するのだが、そのゴジラ対策が性急になり葛藤が薄れ、作品自体のスケールがやや小さくなってしまったのは残念だった。

 さらに主要人物の一人を演じた石原さとみはミスキャスト。日本と米国の橋渡しをする要の人物に小柄で可愛いタイプは似合わない。美人でなくてもいい、したたかで上昇志向を漂わせる30代後半から40代前半の演技派女優が相応しい。

 主演の男優二人、政府官邸の実務を掌握する人物を演じた長谷川博己竹野内豊はハマっていた。なにより優柔不断な総理大臣を演じた大杉漣が上手い。それにしても防衛大臣役の余貴美子が現防衛大臣稲田朋美とダブったな。

 この映画では自衛隊が全面協力している。自衛隊が活躍することでタカ派的側面が強調される...とこの映画を批判する人たちもいるようだが、そのような批判はかなりズレてる。映画という健全なエンターテイメントを楽しむべきだ。

 ともかく「シン・ゴジラ」のような作品を通して「日本を守る」とはどういうことなのか、いろんな観点から議論されることが望ましい。

 ゴジラはぬいぐるみではなく初のフルCG、造形もかなり変わった。新しいゴジラシリーズのスタートになるのだろうか。