人間は皆弱いよ

「自分のことは自分がいちばん良く知っている」と言われる。
だが「自分のことをいちばん知らないのは自分自身」とも言えそうだ。

いつも他人を直接見ている自分だが、自分で自分をじかに見ることはできない。
鏡で自分を眺めても、本当にこれが自分なのかと疑問が沸かないだろうか。
もし鏡が少しでも歪んでいたら本物を映したことにはならないんだから。
鏡に映る自分なんて仮の姿に過ぎないのさ。

いつも喋ってる自分の声を録音して聞いてみると、もの凄い違和感がある。
最初、だれもがこれは自分の声だとは信じられないし、信じたくない。

本物の自分と、自分自身に対する思い込み。
そこにはかなりのズレがあることを自覚した方がいい。

自分で自分のことがよく分からないからなんとなく不安になり、
だから潜在的に恐れを抱きながら皆生きてるんだよ。
突き詰めれば、自分ほど得体の知れない存在はないからね。

不安と恐れに苛まれ、いつもオドオドしてる。

人間は皆弱いよ。
弱いからこそ強がって必死にバランスを取ろうとするんだな。
ところがバランスが崩れると強がる方向に暴走しやすい。
だれだって人前で自分の弱さをさらけ出したくないからね。

ヘイトスピーチなんてその典型じゃないか。
他者に向かって憎悪を浴びせ差別することで強がって見せる。
他者に向かうから自分から遠去かり、だから自分の弱さがますます見えにくくなる。
あげくの果て、相手を傷つけ自分も消失、破滅する。

ある意味、自分の弱さを直視することは、もっとも勇気のいることだ。
自分の弱さを人前で認めることがみっともないと思うなら、
せめて、たった一人になったとき思う存分勇気を奮い立たせればいいのさ。