小心者の証

 NHKの新会長に就任した籾井(もみい)勝人氏が「従軍慰安婦はどこの国にもあった」と記者会見で発言し、公共放送の会長の言葉としては不適切極まりないことから、一斉に批判の声が挙がった(政府が右といったことを左というわけにはいかない、の発言はもっと重大だが)。

 橋下徹などは自分の仲間ができて大喜びしているが、それにしても似たような器の小さな人物ばかりがよくもまあ次から次へと出てくるものだ。

 結局、「〜どこの国にもあった」と発言し一般化することで、どこの国も同じ、日本は悪いことをしたわけではない、戦争なんだから仕方ない、と先の大戦の責任逃れをしたいわけである。

 このような発言には、中国や韓国をはじめとするアジア諸国を蔑視する精神構造が背景にあり、日本を特別な国として、自己陶酔・自己愛に耽溺したがる心象が透けて見える。これはすなわち差別感情であり、優生思想であり、それがヘイトスピーチへと繋がってゆく。

 彼らは、自分を直視することを恐れており、特に自分の弱さを自覚することを極端に恐れている。彼らは自分を直視できないから自分に対しては盲目となる。

 人間とは本来弱い存在である。その弱さを自覚してこそ、強くなるための一歩を踏み出すことができるはずだが…。弱さを自覚した真に強い人間は、だからこそ決して威張ったりはしない。

 安倍晋三も、橋下徹も、石原慎太郎も、田母神俊雄も、渡辺恒雄も、籾井勝人も……彼らはまったく同じ穴のムジナ、私にはそのようにしか見えない。

 他の国や人のことを言う前に、まずは自国や自分について発言すべきなのだ。自らの謝罪や反省ができてこそ、他者に対して説得力を発揮することができるというもの。

 有名・無名を問わず、たった一度の人生なのだから、虚勢を張り、力を誇示し、偉ぶりたがる小心者のまま終わりたくはない、とつくづく思う。