大器晩成型の典型

 人間の成長のあり方は大きく「早熟型」と「晩成型」に分けることができるかもしれない。

 現実社会で目立つのは早熟型で、主に学校時代に試験で良い成績を収めた高学歴の人たちが様々な分野で活躍?することになる。対して晩成型はほとんど目立たず、まるで存在価値がないかのように貶められていないか。

 早くから才能を発揮し活躍できる人がいて、後から徐々に実力を伸ばし始める人もいて、いろんな人たちが混在できてこそ豊かな社会を築けるはずだが、現実では晩成型の多くが潜在的な力を発揮できず埋もれたまま終わる。そのため社会が偏って形成されているような気がしてならない。

 ポルトガルの世界的映画監督マノエル・ド・オリヴェイラ氏がこの4月2日に106歳の生涯を終えた。私は4月9日の地元北陸中日新聞の夕刊文化欄にて知ることになるのだが、映画好きな私にとってオリヴェイラ監督はもっとも興味深い人物のひとりであった。

 オリヴェイラ監督こそ大器晩成型の典型だ。長い映画監督人生だったが、一般の人なら引退をとっくに覚悟してもおかしくない70歳を超えてから本領を発揮したのだからスゴイ。100歳を超えても映画にこだわり続け邁進した生涯は見事。

 日本にも日野原重明氏のような103歳の現役医師が活躍されているが、右とか左とかの思想信条は別にして、超高齢者が得意分野で活躍しつづけるのを見るのは楽しく大変勇気づけられる。日野原氏などは医師・博士として若い頃から活躍されていたので晩成型とは違うかもしれないがー。

 私はオリヴェイラ氏のような人を見ると元気が出てくる。それは私自身も大器晩成型だと勝手に思っているからで、平均寿命が延びて高齢化社会を迎える今日、いろんな分野で活躍する高齢者が多く現れることを期待する。

 人生には「若い頃にしかできないことがある」といかにも若さに特権があるかのように昔から吹聴されているが、年齢にこだわるかぎり人生を狭苦しくするだけだと思う。人生に遅過ぎるということはなく、これからは特に恋愛や表現の分野で色とりどりの花が開花してほしい。