笑い話

 私が東京で暮らし始めて間もなく、まだ20代の前半、都内を探索するため知らない場所をしょっちゅう歩き回っていた頃。ある日のこと空腹になったので食堂を見つけ入った。珍しいものを食べようと、メニューから「オニオンスライス」を注文。店員は怪訝そうな顔をしながら奥へ。ほんの少しの間をおいて出てきたものを見て私は驚く。玉ねぎの上にカツオ節が乗っているだけの一品。なぜ?ご飯が出てこない!

 オニオン(玉ねぎ)の意味を知らず、オニオンスライスなどに縁のなかった私は、てっきり「オニオンス・ライス」だと思って注文したわけ。「オニオン・スライス」とは後で知った。

 ニュージーランドをじつは私は長い間「ニュージー・ランド」だと信じていた。イングランドアイルランドアイスランドのように、〜ランドと思い込んでいた。「ニュー・ジーランド」と知ったのはかなり時間が経ってからである。

 小・中学生辺りにまで遡れば、事故や災害で電車のダイヤが「フツウ」になったとのニュースをときどき聞いたが、私はフツウで何が問題なのかサッパリ分からなかった。私はニュースで聞いたフツウを「普通」だと思い込んでいたので、普通のどこが悪いのか不思議でしょうがなかったわけだ。それがじつは「不通」ということを知ったのは恥ずかしながらかなり後になってからだ。

 似たような勘違いや思い込みは私だけでなく、おそらく大勢の人が何かしら経験済みだろう。後々になって笑い話のネタにでもなればいい。

 ところでつい昨日のこと。テレビのニュースから「シンジタイ」という言葉を聞く。自衛隊とか集団的自衛権とか安倍総理とかと一緒に出てくる。アナウンサーが「信じたい」と肯定的に喋るものだから、私は「冗談じゃない、信じてたまるか!」と独り言を口にする。

 だがこの「シンジタイ」は「新事態」のことで現安倍政権の用語なのだということがすぐに分かった。それにしても、平和への希求どころか正反対に戦争への道まっしぐらの安倍政権の実態はまったくシンジラレナイ。