漠然たる不安

 今や日本全土を漠然たる不安が覆っているかのようだ。先行きがまったく不透明で、何か不気味で得体の知れないものが跳梁跋扈しそうな雰囲気である。

 自民党安倍晋三内閣が発足して高い支持率を得ている。具体的には何も進めていないのに、円安や株価上昇による景気回復への期待が要因らしい。しかし、物価上昇しても給料が上がる見込みはないので、半年後、一年後、二年〜三年後に庶民の生活は窮地に追い込まれ、社会全体がにっちもさっちも行かなくなる可能性の方が高い。

 TPPへの参加を安倍総理は表明した。だれが想像しても分かるように、日本が主導権を握れるはずがなく米国にうまく操られるのが関の山だ。経済を中心に米国は日本よりも中国を重要視することはハッキリしており、尖閣問題などで表向き米国が日本寄りの姿勢を見せるのも、じつはTPP交渉において圧倒的有利に立つための策略なのだ、と勘ぐれる。

 コメは除外してやるから、医療・保険・金融分野等は米国に従え、なんてことになるなら、これまで国民ひとり一人がコツコツと貯め込んだ1500兆円もの資産の大半が一気に米国に吸い取られかねない。

 原発問題は解決するどころか、再稼働へ舵を切ることで危険度が増大するし、原油高騰や金利上昇や消費税10%で中小零細企業は立ち行かなくなるし、前世紀の60年代〜80年代の夢をもう一度、という公共事業に頼る自民党の復古調政策には将来への展望が全く見えない。

 確かに、短期間だが大企業は儲かるだろう。そして、そんな大企業がスポンサーのテレビや新聞のマスコミは、いかにも全体が景気回復したかのように大合唱することで、われわれ庶民を洗脳しにかかる。

 過去の栄光にすがりたがる意識からは、健全な未来志向は育つはずがなく、憲法改悪や軍事大国を目指す安倍政権だが、その前に経済政策で失敗するかも。いや、失敗を決して認めず、日本は益々北朝鮮朝鮮民主主義人民共和国)化してゆく。

 「ぼんやりした不安」を理由に小説家の芥川龍之介は自殺したが、当時の芥川は日中戦争から太平洋戦争へと日本が泥沼から破滅へ邁進する近い将来を予見していたからだろうか。自殺したくない私は予測不能な近未来を直視したいし、直視するだけでなく抗う気概を持ちつづけたい。本当にどうなるのだろうか?