真の変態

 少し前だが、女子中学生が誘拐され二年間も監禁されていた事件があった。23才の男性が容疑者として身柄を確保されたが、この容疑者の外見や経歴を見る限り、まったくごく普通で、どこにでもいる真面目そうな男性だった。

 私は東京新宿の歌舞枝町で10年以上Barを経営し、場所柄いろんな人種と遭遇してきた。名前を聞いただけで色メガネで見られかねない歌舞枝町、それこそ変わった容貌で日夜ウロつく輩が街中には多く、彼らは独特の雰囲気を醸し出す。

 だが、私にはよく分かったことがある。いかにも変態的に見えるのはじつは決して真の変態ではなく、本物の変態はさりげなく普通で目立たないということが。

 「いかにも」とか「やっぱり」で予想されるようではたいしたことなく、「まさか」「信じられない」世界に引きずられてこそ奥深く興味がつきない。犯罪だけに限らず、これはあらゆる分野に当てはまるのではないだろうか。