高校野球雑感

 夏の全国高校野球甲子園大会も大詰めを迎えたが、今回は北信越と東北勢の躍進が特に目立った。その理由として、両地域の各校とも近代設備が充実してきたことや、気候変動で雪があまり降らなくなったことなどあるが、なんといっても大阪や兵庫を中心に野球留学する生徒が増加したことが一番だと思う。

 ベンチ入りした選手の大半が県外出身者という高校もあって、純粋にその地域内の出身者だけの高校は、今大会は49代表のうち15校しかないそうだ。いくら学校が地元でも、野球部員のほとんどが留学生では真剣に応援する気にはなれないだろう。

 私自身、野球留学はあまり好きでなく、地元の生徒たちだけの野球部をどうしても応援したくなる。しかし、だからといって野球留学を全面的に否定する気にはなれない。野球で自分の能力を発揮したい生徒にとって、チャンスが広がる場所があればそこで努力したいと思うのは当然だし、なにより本人の意思を尊重すべき。

 より大きな問題は野球留学よりもっと別のところにある。神奈川(190校)も大阪(180校)も鳥取(24校)も代表校は一つだけというのが不公平そのもの。東京都と北海道からは二校だが、各府県から一校という現行制度がまずはおかしい。さらにメディアが高校野球を煽り過ぎ。NHKは全試合を朝方から夕方まで放送するが、まったく必要ない。高校野球への偏重は相変わらずで、野球に興味のない人には大変な迷惑である。

 オリンピックが国別対抗でナショナリズムを煽るようになり堕落したが、高校野球都道府県にこだわる必要はないのだ。オリンピックや高校野球に限らないが、スポーツから国境とか県境のような線引きは取っ払うべきである。

 ついつい「地元」とか「故郷」という言葉に惑わされるけど、高校野球を見ていると、応援する人の多くは野球が好きというより地元や故郷への愛着心が旺盛で、高校野球はプチ・ナショナリズム育成の手段に過ぎないのではと勘ぐりたくなる。

 むしろ野球留学は規則を整えて増加させた方がいいのかもしれない。それで地元意識が薄れ、都道府県対抗から学校対抗へと変化すればメディア露出も減るだろう。高校野球の全体像が見直され、世の中の格差が少しでも是正されるとしたら結構なことだ。