今年(2013)のベスト5

 2013年度は政治的には最悪だったにもかかわらず、それでも見たり、聞いたり、触れたりしながら、個人的に感性や知性を刺激してくれる様々な表現と出会うことができて幸いだった。

 そこで、表現に関するものを対象に今年のベスト5を選んでみる。世間では一般的かもしれないが、私にとって2013年度中に初めて接し感動したものばかり。だから比較的新しいものから古いものまで混在している。(番号は付ってあるが順不同)

1)突然炎のごとく(映画)
2)ドグラ・マグラ(ミステリー小説)
3)ブラック・ジャックによろしく 1〜13巻(マンガ)
4)Braid(ゲーム)
5)お酒の詩 70編(詩)

 1)は1962年度フランソワ・トリュフォー監督のフランス映画。原題は「ジュールとジム」。傑作の誉れ高いこの作品を50年以上も経過してから衛星放送の洋画専門チャンネルでようやく鑑賞することができた。これは映像で綴られた詩と小説。白黒画面が美しく、また主演のジャンヌ・モローが素晴らしかった。DVDにコピーして永久保存しておきたい。

 2)は1935年刊行された小説家・夢野久作の探偵小説。このあまりに有名な作品をインターネットの青空文庫で読んだ。怪奇・幻想趣味の作風はミステリーでありながら従来のミステリーとは著しく異なっているため、小栗虫太郎の「黒死館殺人事件」、中井英夫の「虚無への供物」とならんで三大アンチミステリーに数えられる。この三本と、もうひとつ、これらの集大成とも言うべき竹本健治の「匣の中の失楽」を含めすべてを読破した。どれもが長大だが個性的な傑作だと思う。

 3)もアップルのiBookからダウンロードして全巻を読んだ。大学医学部を卒業したばかりの若き研修生の視点から、日本における医療世界の現状を描いた本作はじつに読み応えがあり鋭く問題提起してくれる。著作権が切れていない最近の作品なのに全13巻が無料で読めるというのは凄い。パソコンやタブレットでのマンガは読みやすく、インターネットの力をまざまざと見せつける。

 4)の世界にはすっかり耽溺し、優れたコンピュータゲームの奥深さを思い知らされた。YouTobeにアップされた攻略ビデオを見ながら必死に取り組んだが、それでもゲーム素人の私には悪戦苦闘の連続。しかしだからこそゲームの達成感は格別だった。これからもコンピュータゲームには出来るかぎり携わりたい。

 5)はネットサーフィンをしながら見つけた詩のサイト。古今東西の酒に関する作品が集まり、詩も酒も好きな私にはたまらない世界である。夜遅く、睡眠に入る前の寝酒タイム、読むうちに妄想が勝手に広がり、じつに心地良かった。詩は私にとって永遠のテーマ。もっともっと、いろんな詩の世界を探求したいと思わずにはいられない。

 以上、改めてパソコンのインターネットを通しての体験が多いことが分かる。時代はインターネットなくして成り立たないのだ。とはいえインターネットに依存し過ぎるのは問題。権力から監視・管理されないよう、なんとかインターネットとは上手に付き合わなければならないと実感する。

 さて、2014年度にはどんな表現との出会いがあるだろうか。特定秘密保護法案の成立で表現の自由が脅かされかねない。表現の根本は人間の存在であり、ひとり一人の個人の生き方が厳しく問われる。