日本の刑務所化

 マイノリティ・リポートというSF映画スティーブン・スピルバーグ監督、トム・クルーズ主演、米国制作・2002年公開)があった。犯罪を予知し、実際の事件が起きる前に当てはまる人間を先に逮捕することが可能となった社会。犯罪件数はほとんどゼロになり、安全で安心な社会が実現して平和が保たれている。

 どんな国家権力も安全・安心で平和な社会を築きたい。だがその為に国家権力は、自由と平等と情報公開でそれを目指すのか、それとも徹底した管理と監視と秘密でそれを目指すのか…。自由で平等で情報公開されると体制を維持しにくいから、どうしても管理・監視・秘密へと国家権力は走りたがる。

 特定秘密保護法案が衆参両院を通過し成立したとき、マイノリティ・リポートを思い出した。映画で描かれたような、犯罪を予知する超能力者(プリコグと呼ばれるらしい)など現実には存在しないのだから、実際に犯罪を予防するにはどうしたらいいのか。

 大勢の善良な人々が生活を営む社会にあって、ほんの僅かしか存在しない犯罪者を摘発するためには、そうだ全員を犯罪者扱いにしてしまえばいいのだ。そうすれば本当の犯罪者も中に含まれているから、これは100%確実となる。

 犯罪者を絶対に取り逃がさない方法、それは社会全体を刑務所にすること。国そのものが刑務所になれば、どこに隠れ潜んでいようと犯罪者は一網打尽と等しく、警察はなんら苦労することはない。表向き安全・安心で平和な社会が現出するが、しかしその実態は巨大な刑務所システムが運用されるということだ。

 完成した日本刑務所では、安倍刑務所長と麻生副刑務所長、石破刑務管理部長がトップスリー。マスコットガールが森雅子。そして表に顔を見せない官僚たちは、トップがいつ替わっても大丈夫なよう準備に忙しい。

 そんな日本刑務所内では、粗末な三度の食事と低賃金の仕事が与えられ、娯楽は安っぽいポルノビデオの鑑賞。囚人たちは衣・食・住、そして仕事と娯楽に満足しながら、平和を貪り、一生を終える…。