悪い奴等

 「悪いことをすれば必ず捕まる」
 子供のころに親や学校の先生からさんざん諭されたこの言葉も、
 今となって説得力はずいぶん失われた。

 悪いことをしても罰せられない奴等のなんと多いことか。

 夢が羽ばたく子供のころの空想とは違い、
 大人になり現実を見据えて想像を働かせるなら、
 悪党どもが善人面して普段通りの生活を営み、
 犠牲にされる多くの人々の浮かばれない現状が透けて見える。

 地面を掘り返せばいくつもの名も無き死体が発見されるだろう。
 覗いたことのない部屋の扉を開ければ辛苦の臭いが充満しているだろう。


 若いころはまだ、刑務所の中にいる人は「悪い人」だとの思い込みがあった。だが本当の悪党とは、刑務所に収監されてる人たちよりも、むしろ刑務所を管理する人たちではないのか。

 「戦争と平和」の言葉にだまされないように。「戦争は悪で、平和は尊い」はその通りかもしれないが、戦争とか平和とかの言葉をもっと吟味しなければ…。戦争を憎んで平和を望むあまり、為政者たちが建造しようとする頑強で平和?な刑務所へ、三食付きだからと言って自ら進んで入ることのないよう十分に気をつけよう。

 人々から自由を奪い、徹底的に監視・強制したがる奴等はいつも最新の刑務所を設計することに余念がない。おとなしい善良な人々が刑務所へ入りたがるように、またそうせざるを得ないように、支配者は常に企む。

 刑務所同士が意地を張り合うあまり、誤って火花を散らすこともあるかもしれない。だがしかし、自由を求める罪なき人々が社会全体の刑務所化を阻止するため権力に挑むとき、それこそが本当の戦いとなる。