銭湯の廃業

 我が家にフロはあるが古くて狭くてあまりリラックスできない。そこで近所の銭湯にときどき出かける。しかし夏のあいだはシャワーで十分なので銭湯に行くことはなかった。さすがに秋も深まるとシャワーだけだと寒くて風邪を引きそう。そこで久しぶりに馴染みの○△銭湯へ出かけることにした。

 ところがせっかく来たのに臨時休業の張り紙が貼ってある。よく読むと「11月20日をもって廃業します」との告知。ちょっとビックリ。あと一ヶ月もないじゃないか。銭湯の廃業の知らせは、とても残念で、急に寂しくなってしまった。

 ○△銭湯の廃業だが、ある程度は予想していた。いつ行っても数人の客。入ってから出るまで私だけというときもあった。夕暮れ時に行くことが多かったので、夜なら多少は混んでるかもしれないと、20時〜21時頃に出向いたこともあったが、夜の方がもっとガラガラだった。お湯や水の蛇口がいくつか壊れており、壁も薄汚ないし、点かない照明もあり、いつまでも改修されないので、ひょっとしてこのまま終わるのかなぁとは思っていたが…。

 時代の趨勢とはいえ、街中から銭湯が次々と消えてゆく。いつか近いうちにまったく無くなるかもしれない。銭湯好きな私としては、歩いて通える場所に最低一カ所は残してほしいが…。銭湯に行けなくなると、イヤでも我が家のフロを酷使せねばならず、これまたいずれ近いうちに改修・改造は必死。そのときは相当お金がかかることが予想され、私にはそれが心配なのである。

 銭湯通いをしてつくづく実感したこと。若者を見かけることはまずなく、ほとんどが高齢者。核家族化が進み、近所は一人暮らしのお年寄りばかりだ。フロのない昔ながらの古い家や長屋のアパートで暮らすお年寄りにとって、銭湯はとても貴重な場所であることは間違いない。遠出できない一人暮らしのお年寄りはこれから先、いったいどうすればいいのだろうか。

 20年〜30年後に、日本は超高齢者社会のピークを迎える。貧富の格差がますます拡大してゆく社会で、だれもが等しく施設に入れるわけではない。おフロにも入れない高齢者がいっぱい出てくるだろう。銭湯の廃業を目の当たりにして、近未来の日本社会の一端がハッキリと見えてくる。