地域同士の補完

 今年の夏は本当に極端。猛暑に覆われた西日本の太平洋側と、豪雨に見舞われた東日本の日本海側、これほどハッキリ色分けされるのも珍しい。日照りがつづく関東や四国では貯水ダムが干上がり、地域住民には節水制限が発動されている。一方、東北や北海道の一部では水害が深刻である。

 私が暮らす石川県の金沢は日本列島のほぼ中央、おかげで極端な気候変動に悩まされることは今のところない。だが、日本海側なので昔から冬は雪が多く「弁当忘れても傘忘れるな」のことわざがあるように年間を通して二日に一度は雨模様なのである。だからこそか、水害の不安はあっても、水不足になる心配はまったくない。

 関東や四国の水不足のニュースを見る度、冬のあいだ北陸・東北の山間部に積もった大量の雪や、雪が溶けて大地に沁み込んだ十分な水分をどこかに溜め込み、夏の水不足が予想される地域に供給できればとか、また逆に、日照時間の長い冬の太平洋側では太陽光を吸収蓄積し、それをなんとか熱源にして日本海側に送ってもらえるならありがたい、などと素朴に考える。

 狭くとも、各地域でまったく違う様相を見せる日本列島。互いに地域同士が補完できるシステムが稼働するならどんなに素晴らしいだろう。そう簡単にできないことぐらいは分かる。しかし、発送電分離やパイプラインの増設など、決して不可能ではないと思うし、現在の、さらに今後の科学技術を駆使すれば十分実現しそうではないか。

 人為的に雨を降らせる装置もあるようだが、雲がない晴天の空にはまったく効果がないので限界がある。北海道では夏になっても溶けない雪の山が残り、行政が頭を抱えているというニュースも見た。気持ちがなんとも複雑になる。

 原発に依存する社会など論外。国土強靭化の名の下に無駄な公共事業に多額の税金が遣われたのでは堪らない。地域同士が補完し合う有効で新たな公共事業を発案し、それで雇用を増やし、地域格差を是正しながら経済を活性化すべきだ。自然をコントロールしたいという傲慢な意識では、かならずしっぺ返しされる。自然の力を利用させていただくという謙虚な気持ちこそが、人類の未来を拓く。

 ところで、海水を真水に変換する装置はすでに開発されているはずだが、それを大規模に展開し、広く一般に普及させれば水不足など一気に解消すると思うが、難しいのだろうか…?