金はいっぱい、仕事はさっぱり

 アベノミクスの象徴である日銀新総裁の黒田東彦氏がデフレ脱却のため、供給するお金を現在の137兆円から2年で270兆円に倍増する量的緩和制度を発表した。結果、市場は素早く反応、株価は急上昇、円安もさらに進んだ。それら一連の動きに対し、メディアを中心に世間は好意的に受け止めた。

 だがしかし、私のような庶民は、浮かれた報道を見ながら疑問を抱くしかない。日銀の刷った大量のお金はどこへ行くのか? 庶民の懐へ入ることは決してなく、それは一般の銀行へ流れるだけ。問題は、銀行が経済活性化のため中小零細企業へキチンとお金を渡してくれるかどうかだ。

 日本企業全体の95%以上を占める中小零細の立場からすると、お金を借りたいのはやまやまだが、先行きが不透明で、設備投資をしたくてもできない。新しい確かな仕事の受注がないのでどうすることもできない。中小零細としては、まずは仕事が欲しい。真面目に仕事をして少しずつでもいいからお金を稼ぎ、従業員にそれなりの給料を払いたいのだ。

 日銀が刷った大量の札束は、結局、一般の銀行止まり。銀行は大企業の安全運転にしか投資せず、または大量の国債を買うしかない。デフレ脱却どころか、金融バブルがはじけ、日本の借金は増えるばかり…そんなとんでもない危機的状況を招きかねない。

 かつて、日本経済は繊維産業が盛んで社会を支えていた。時代の変遷とともに、それが鉄鋼や造船や半導体へと移り変わり、今現在、電機産業も苦戦、かろうじて自動車のみが屋台骨のような印象である。

 全体の仕事を増やし、雇用を確保し、資金を流通させ、実態経済を活性化させたいなら新しい産業を起こさなければ。化石燃料が高騰し地球温暖化も心配、原発大事故による放射能拡散はまっぴらゴメン。では、どうすればいい? 自然を中心とした再生エネルギー革命で産業構造を転換させるしかない。中小零細に仕事が行き渡るよう日本の未来を切り開かなければならない。

 アベノミクスがやろうとしているのは、原発再稼働や軍備増強、TPPで市場を米国に売り渡し、さらに平和憲法を改悪。少子高齢化と人口減少への具体策はまったくなく、戦前回帰のような日本復古主義ばかり。安倍自民党と、その補完勢力である橋下・石原の日本維新の会で日本は壊滅するだろう。