12月16日以前と以後

 2011年3月11日に発生した大震災は、大地震と大津波による天災と東電福島第一原発大事故による人災が重なった未曾有の出来事で、3・11以前と以後とで時代を区別せざるを得ないほど多くの人々に衝撃を与えた大災害だったといえる。

 さて、政治状況に眼を移せば、第46回衆議院選挙が実施された2012年12月16日をもって、それ以前と以後とで日本社会を区別せざるを得なくなるかもしれない。それほど12月16日は悪い意味で記念すべき日となった。

 ある程度の予想はしていたが、それにしても予想以上の結果である(小選挙区制、一票の格差投票率の低さ…等々問題が多過ぎる)。480議席のうち自民と公明だけで325議席、民主や維新やみんなを加えるなら450議席以上となり、未来と共産と社民の合計は20にも満たない。リベラル・左翼の存在感は無きに等しく、ウルトラスーパー右翼大連合の政治状況と化したわけである。

 歴史は繰り返すというが本当だな。1930年代と似たような不穏で窮屈な社会がすぐ目の前に現れそうだ。もちろん、科学技術の進歩や世界情勢の変化などでソックリにはならないが、ひとり一人の人間の自由と平等が脅かされるという意味では同じだ。

 次期総理大臣となる自民党の安倍総裁はさっそく憲法改正のために動き出すという。立憲主義を基に権力の身勝手を縛るための現憲法が、まったく逆に、民衆を監視・管理・拘束するための権力にとって都合のいい憲法に置き換えられる可能性が非常に高くなった。

 今回の選挙、目先の「景気対策」に多くの人が騙されたようで、確かに政権が変われば景気はある程度良くなるかもしれない。だがしかし、それは大企業だけに当てはまるのであり、日本社会を根底から支える大多数の中小零細企業に恩恵はほとんど回ってこないだろう。いざなぎ景気を超えたと言われた2000年代中期を思い出すがいい、何百兆もの内部留保を大企業は貯めたが、逆にサラリーマンの所得は年々減って貧困層は増加したのだ。今後、たとえ表向き景気は回復しようとも、格差は益々拡大し、借金は益々増大するだけだ。

 投票日直前における東京秋葉原の選挙応援をネットでたまたま見たが、それは凄まじい光景だった。何千人もの群衆が日の丸を掲げ「安倍晋三」を連呼する様は、まるでナチス北朝鮮を彷彿させた。ただ1930年代と違うのは、インターネットで情報が瞬時に世界を駆け巡り、地球はちっぽけな球体で限界があることを人類は知ったこと。それらの現実を自覚しながら、共存・共有を目指す自立した人々の地道な努力に未来を託すしかない。