アベノミクスのデタラメ

 年収200万円以下の人が、ある日突然1億円の大金持ちになったら…それで十分満足するだろう…と思うのは早計であり、おそらく次は2億円欲しくなる。人間とはそういうもの。まして会社の経営者ともなれば、まずは稼いで儲けねばならず、資産は多ければ多いほど良いに決まってる。

 さて、アベノミクスのシナリオは、「企業がうんと利益を出せば、その余剰分は働き手にも還元され、景気は回復し、社会全体が潤う」という。これを経済の専門用語で「トリクルダウン効果」と呼ぶらしいが、今のうちハッキリ言わせてもらえば、企業がどんなに儲けようと、ほとんどの労働者のサイフの中身は薄いまま、トリクルダウン効果は起きない。

 冷戦構造が終わり、その後に資本主義が暴走して今日の金融強欲主義が世界を覆うことになった。グローバル化という名の下に企業は勝ち負けにこだわり競争に明け暮れる。病的なほど「稼いで儲けなければ」という意識に呪縛され、企業は労働者への分配など露ほども思わなくなった。なぜなら、企業にとって労働者とは儲けるための使い捨て道具に過ぎないのだから。

 かつての高度経済成長期、多くの労働者が団結し組合の交渉力が強かった頃、万単位のベースアップはザラで会社員の給料は確かにドンドン増えた。しかし、時代も変わり、非正規社員が増加し労働組合も弱体化、春闘ではベースアップどころか定期昇給すら確保できないていたらくとなる。(現状の労働組合の実態は、企業内の労働管理部へと変質、労働者の代表どころか会社の代弁機関に堕落している。特に大企業の労働組合はヒドイ。)

 お金はないよりはあったほうが良いのだから、ひとり一人の個人であろうと組織を束ねる経営者であろうと、人間の心理としては同じ。年金を貯め込むお年寄りや、内部留保を増やすだけの大企業を見れば分かるとおり、とにかく資産は減らしたくないのである。

 強欲主義に覆われ格差が拡大する世界、労働組合も頼りにならず、グローバル企業が資本の独占を狙う。こんな状況の中、たとえ表向き景気が良くなろうと(企業が儲かろうと)、社会の末端を生きる大多数の労働者にまでお金は回ってこない。すなわち、アベノミクスが成功しようと失敗しようと、庶民にとって悲惨な現状は悪化することはあっても改善することはないのだ。