日本国憲法を読み返す

 衆議院選挙が目前に迫っている。原発、消費税、TPP、沖縄、景気対策社会保障…など、重要な争点は多いが、突き詰めれば日本国憲法の是非が問われる選挙だ。

 以前、自民党政権の末期までは「改憲」や「護憲」の言葉が飛び交い憲法論議が騒がしかった。だが、政権交代して民主党が国政を担うようになってから沈静化した。ところがここに来て、日本維新の会の石原代表や自民党の安倍総裁が改憲を再び大声で叫び出し、火に油を注ぐような状態になっている。

 改めて日本国憲法を読み返す。日本国の最高法規である憲法は何度でも読み返そう。そして読み返す度に感心する。ハッキリ言おう「日本国憲法は素晴らしい!」と。特に、前文及び第二章(第九条)と第三章(第十条〜第四十条)には感動する。前文と、第二章「戦争の放棄」と、第三章「国民の権利及び義務」に関して、全く変える必要はない。この立場において私は徹底した護憲論者だ。

 ただし、第一章「天皇」、第四章「国会」、第五章「内閣」、第六章「司法」、第七章「財政」…以下、第十一章「補足」の第百三条までの文言には時代の変遷とともに、いずれ見直さなければならない内容が含まれているかもしれない。だから長期的に見て、前文及び第二章と第三章以外の中身について私は改憲論者にもなりうる。

 ところで、ふと思う。国民の中で日本国憲法を最初から最後まで目を通し、さらに理解した人がいったい何人いるだろうか? 理解せずとも、少なくとも全ての文言を一度でも読んだことのある人が果たしてどれだけいるだろうか? 多くの人が、読みもせず、理解もせず、ただ時代の風潮に身を委ねたまま、流行のように「改憲」や「護憲」を叫んではいないだろうか。

 日本国憲法をまずは読んでみることをお薦めする。そして、より多くのことを感じ、より広く深く考えていただきたい。そこには理想が描かれており、現実社会が憲法の内容から随分かけ離れていることが分かる。しかし、だからこそ、その理想に一歩でも近づくため、あるいはこれ以上理想から離れないため、皆で努力を重ねたいと思わずにはいられない。

 繰り返す。前文と、第二章「戦争の放棄」(第九条)と、第三章「国民の権利及び義務」(第十条〜第四十条)に関して、それらを変える必要は全くない。さらに、第九十六条と、第九十九条も、安易に変えようとしてはならない。