菅直人前総理を評価する

 自民党から民主党政権交代してまだ3年にも満たない。このわずかな期間における民主党の政治とは自民党になることをひたすら目指すことだったのか。鳩山から菅、そして野田へと一年ごとにトップが交代。そして野田首相になって2度目の内閣改造。これまでいったいどれだけ大臣が代わったか、多すぎて数えきれない。

 政権交代しても何も変わらず、却って悪くなったとの意見もあるが、私はしかし、それでも政権交代して良かったと思っている。普天間や公共事業、国債のこと、税金のこと、そして原発行政など、日本はこれまであまりに多くの難題を抱えてきた。政権交代して、国民の多くがそれらの諸問題をある程度は把握できるようになっただけでも意義がある。

 特に原発行政について、あの大事故以来、国民は「電力事業の仕組み」や「原子力ムラ」や「放射能」に関して、これまで自分たちがいかに無知であったかと気づかされた。政権交代せず自民党政治がつづいていたら、あれだけの大事故にも関わらず従来の政・官・財の癒着構造から民主党政権以上の隠蔽工作が働き、本当に肝心なことを私たちは未だ知らされていなかったろう。

 菅直人前総理の評価はマチマチだが、どちらかといえば悪い。いや、相当悪いと言った方が当たっている。私にとっても良い評価はほとんどないが、それでも唯一、東電福島第一原発事故が起きたとき、「全員撤退」を示唆して逃げようとした東京電力に「撤退などありえない!」と怒鳴りつけた一点だけは高く評価したい。

 いろんな人々の証言が事故調査委員会などから出ているが、事故当時における東電の勝俣恒久会長や清水正孝社長の言い分が信用出来るはずがなく、少なくとも彼らよりも私は菅直人の方を信用する。そして、もしあの時、菅直人ではなく自民党の誰かが総理だったらと想像すると、寒気がして暗澹たる気持ちに陥る。

 2011年3月11日、東電福島第一原発事故が発生。財界の操り人形で原子力に無知な自民党の○○総理は東電の意見を丸呑み。全員が撤退して歯止めが効かなくなった原発の事故は無人の中で連鎖反応、4号機の使用済み核燃料プールも崩壊。関東地方全域に大量の放射能が拡散し、3000万人が集中する首都圏は壊滅状態……なんてことが高い確率で実際に起きていたかもしれない。