金(カネ)を受け取る側は命令できない

 小泉元総理が脱原発を唱えて話題になっている。「首相が決断すればできる〜」と現安倍総理に訴えているようだが、安倍総理自民党は決して脱原発へ舵を取らないだろう。

 自民党とは利権党であることなど誰もが知っている通り。財界・企業から多額の献金を受け取りながら、だからこそ財界・企業寄りの政策をこれまで遂行してきたのであり、これからもその姿勢は変わらない。

 つまり、政治家が主導権を握っているわけではなく、裏で支える財界・企業の思惑が政治家を操るのだから、独占企業である電力会社から多額の献金を受け取ってきた自民党が、電力界者に原発中止の命令など下せるはずがないのだ。電力会社本体の方針が変わらないかぎり、脱原発への道はなかなか進めない。

 財界・企業から縁遠い真っ当な政治家が多数を占めること、そして企業経営者たちが弱者への視点を持つこと。最低でもそれらの条件が揃わない限り、公平な社会の実現はなかなか難しい。

 東電福島第一原発事故が起きたときの総理大臣は菅直人だった。市民運動上がりの彼は、自民党の政治家より財界や企業から距離は遥かに遠かった。だからこそ東京電力を「怒鳴りつける」ことができたのであり、現政権の安倍や石破や麻生や甘利には絶対にできないことだ。

 政界の中枢にいた小泉純一郎が「金(カネ)の力関係」について知らないはずがなく、繰り返すが、命令を下すのは金を出す方であり、金を受け取る方は命令に従うだけである。

 政界から引退した小泉純一郎は財界・企業からのしがらみから解放され、今や余裕綽々の毎日なのだろう。息子進次郎の将来をも考えての「脱原発」宣言だと思うが、私には今ひとつ信用できない。

 原発推進者だった小泉元総理が自ら反省して本気で脱原発に転身したのなら、それでは大量破壊兵器が存在しなかったのに米国が突き進んだイラク侵略を、英国とともに支持した責任は取ってもらいたいし、さらに構造改革の名の下、格差社会を拡大させた責任もどうしてくれるのか、と問い質したい。