鉄の三角形、四角形、五角形、六角形

 政・官・財の結びつきを鉄の三角形と呼ぶのは昔からよく知られている。そこに米国を加えると、政・官・財・米と鉄の四角形になる。米国はさておき、日本国内における関係だけを見るなら、鉄の三角形に知識人とマスコミを加えて鉄の五角形となり、さらに労働組合を加えれば鉄の六角形を成すというわけ。

 鉄の三角形は強力とはいえ盤石ではなく、公共事業や増税などの失政で庶民の怒りを買う事がたびたび起こる。だから、失政にもかかわらず、それは失政ではなくやむを得ないことにしたい。そこで知識人やマスコミを抱き込み私たち庶民を洗脳する。

 知識人やマスコミで外堀を埋めてもまだ不安だ。労働組合というやっかいな存在がある。労働組合ストライキは鉄の五角形にとって脅威だ。簡単にストライキが出来ないように社会の仕組みを変えなければならない。横の連帯を遮断して、生産過程を縦構造に組み替える。大、中、小、零細、内職という上下の流れに徹底して組み込む。ストライキが政・官・財に影響を与えるよりも大多数の下部底辺が打撃を受けるように仕組み、ストライキの実行をより困難にする。

 経営者は企業の分社化、子会社化を図りながら、「働く者がいなければ成り立たないはずの会社」から、「会社が儲からなければ収入を得ることができない」よう労働者の意識を変える。知識人やマスコミが「経済発展の必要」を口実に経営者側に立って吹聴しまくる。

 「総評」という労働組合が解体し、代わりに「連合」が形成され、大多数の労働組合が連合に参加。勤労者のための労働組合が、会社のための労働組合へと大きく変貌する。頼みの綱の労働組合も堕落、鉄の六角形として支配する側に入った。

 まだ終わらない。鉄の六角形の周囲では、芸能人やスポーツ選手が支配層からおこぼれをいただきながら操られ踊っている。「夢はかならず実現する」と一握りの成功者の言葉をまるで普遍的な意味を持つかのように垂れ流す。夢をそれなりに実現させた人が口にする「夢は実現する」なんて当事者の言葉としてあたり前だ。大多数の人にとって夢など実現するはずがない。

 実態はもっと複雑怪奇かもしれないが、表面的には以上が日本社会の形だろう。圧倒的な力の構造を前にして、ひとり一人の庶民の生き方が問われている。