「維新八策・改定案」を検証する

 近いうちに実施されるかもしれない次期衆議院選挙を前に、地域政党大阪維新の会」が以前に発表した「維新八策」の改定案を新たに発表した。これを基に、橋下徹氏率いる新たな国政レベルの政党が国会で主導権を握ろうと動き出す。

 さて、「維新八策・改定案」をざっと読んでみたが、予想した通り気になる項目が非常に多い。

 もちろん全ての文言を否定するつもりはなく、理念として「自立する個人、自立する地域、自立する国家」とか、財政・行政改革の「企業・団体献金の禁止を含む政治資金改正法の抜本改革」とか、教育改革の「障がい者教育の充実」「海外留学の支援」、さらに経済政策・雇用政策・税制における「先進国をリードする脱原発依存体制の構築」「グローバル人材の育成」、外交・防衛の「世界の平和と繁栄に貢献する外交政策」等々は、中身は別としてスローガンとしてはあたり前のことで、その通りである。

 しかし、全般を通して疑問符が多く付く。あまりに多いので全ては述べられないが、例えば「消費税の地方税化と地方間財政調整制度」「公務員労働組合の選挙活動の総点検」「自助、共助、公助の役割分担を明確化」「社会保障給付費の合理化・効率化」「現物支給中心の生活保障費」「医療扶助の自己負担制の導入」、さらに経済政策・雇用政策・税制においてはやたらと「〜競争力強化」が強調され、「TPP参加、FTA拡大」「国民総背番号制で所得・資産(フロー・ストック)を完全把握」、外交・防衛では「日本の主権と領土を自力で守る防衛力と政策の整備」「日米同盟を基軸〜」、最後には「憲法改正」である。

 要するに橋下徹氏と維新の会が目指すのは、元総理の小泉純一郎安倍晋三が進めた小さな政府で「新自由主義」をさらに徹底して進めようとしているに過ぎず、ある意味非常に分かりやすい。堺屋太一氏や竹中平蔵氏や高橋洋一氏がブレーンになっていることでも明らかだ。地方分権を訴えても、それはじつは「倒産のリスクを背負う」地方自治体の企業化で、教育や経済を通して、あらゆる分野でどんどん競争しろと煽りつつ、総背番号制で徹底的に個人を管理しようとするのである。

 本当にこれでいいのだろうか。私たち一般庶民は雰囲気に流されるだけでなく、十分に熟考しなければならないと思う。橋下徹石原慎太郎のような何でも吠えまくりたがるポピュリストは器の小さな政治家に過ぎず、個人的には全く大した人物ではない。だが、そんな声が大きいだけの地上波テレビ的な政治家の言動に流される社会動向は恐ろしい。

 「道州制」や「首相公選制」などは目的ではなく手段であり、くれぐれも混同しないことが肝心だ。日本社会に生きるひとり一人の人間はどうなるのか? 平等を礎に自由が確立された社会で個性が発揮できるのか? それとも徹底した管理の下に競争に明け暮れる個人となるのか?

 橋下徹氏は大阪において公務員や労働組合に牙を向いたが財界に対してはからっきしダメだった。「日米同盟を基軸〜」や「TPP参加、FTA拡大」を貫くことは外務省や防衛省経済産業省の路線そのものであり、これで中央省庁の改革ができるのか。新自由主義を踏襲する橋下徹代表の政党など財界に楯突くことなどできるはずがないのだ。彼はいずれ脱原発を翻し、近いうちに「やはり原発は必要」などと言い出すかもしれず、そのときはツイッターなどで「すみませんでした」と口先だけで謝りそれで終わりとしかねない。