北朝鮮の人工衛星

 北朝鮮朝鮮民主主義人民共和国)が4月の中頃に人工衛星を打ち上げると予告して周辺諸国が大騒ぎだ。特に日本は、過去に北朝鮮の発射したノドンやテポドンというミサイルが日本列島の上空を通過して太平洋に落下した事実があるため厳重な警戒態勢に入った。北朝鮮人工衛星とはイコール弾道ミサイルであるらしい。

 マスメディアのテレビや新聞は、打ち上げられたミサイル(人工衛星)もしくはその一部が日本の領土や領海に落下することを想定し、日本政府は弾道ミサイル防衛システム(PAC3など)で迎撃する体制に入った、と大きく報道。

 それにしても不思議だ。北朝鮮は打ち上げを各国に通達しただけでなく当日の招待状も送っており、であれば日本はなぜ現地に直接足を運び人工衛星打ち上げを監視しないのだろう。いくら周辺諸国が懸念を表明しても北朝鮮は打ち上げる可能性が高い。ならば本当に人工衛星かどうか確かめるためにも、せっかく招待状が来たのだから堂々と現地に入って他国の人々と共に視察すればよい。

 さらに不思議でならないのは、打ち上げられたのが人工衛星ではなく本物のミサイルだとして、それを防衛システムで迎撃しようとすること。高速で飛んで来るミサイルを迎撃するなど相当困難なはずだし、かりにPAC3が100%の性能を発揮して迎撃できても、逆に爆発したミサイルの大量の部品や破片が落下してくるのではないか。その時はさらに大量のPAC3を発射して破片を迎撃するつもりなのか。(ところで命中しなかったPAC3はどうなる? 自爆して自ら破片を撒き散らすのでは――)

 私自身も当然ながら北朝鮮にミサイルなど打ってほしくない。しかし「これまで好きなだけ人工衛星を打ち上げてきた米国やロシアや日本が、我が国が人工衛星を打ち上げようとすると難癖をつけるのはあまりに勝手すぎる」と反論した北朝鮮の中央テレビの方に残念ながら説得力がある。

 確かに北朝鮮のような国と付き合うのは難しい。しかし硬化な態度に対してこちらも硬化すれば効果は生まれるはずがない。コウカ、コウカ、コウカと、まるでダジャレみたいだが、硬化したままでは解決するものも解決しない。独裁体制に対しては、自由で平等な民主主義を見せつけよう。柔軟な姿勢と対応こそが未熟でコチコチな相手を軟化させる最も有効な方法である。ただ、日本から自由と平等の民主主義が失われつつあるなら、日本は経済的に豊かなだけで本質的に北朝鮮と大差はない。

 表向きは北朝鮮憎しとの態度を見せながら、本当は北朝鮮が大好きな、常に北朝鮮を利用したがる勢力には騙されないようにしたい。果たして水面下でどんな交渉を進展させられるか、外交手腕が問われている。