イルミネーションと星空と

 11月に入ると秋が深まり、同時に冬の足音が確実に大きく響いてきた。この秋から冬にかけての季節、大気が澄んで空がひときわ美しく、特に夕刻時の太陽が沈みかける頃の色合いは目を見張る。

 本格的な冬になれば金沢地方は曇天がつづき、晴れた空を仰ぎ見る機会が本当に少なくなり、だからこそ私には一年を通してこの時期の澄みきった空はとても貴重な景色となる。

 ところで冬を迎えると、クリスマスの影響もあるのだろう、日本中のいたるところでイルミネーションが飾られる。ノーベル賞で話題になったLED照明が中心となり、色彩鮮やかなイルミネーションが街中や田園地帯や山腹や海岸沿いを飾る。各自治体も話題作りに励みたいのか様々なイルミネーションに力を入れ、毎年派手さを競争しているかのよう。

 もちろん金沢も例外ではなく、街を歩けばそこら中にイルミネーションが輝いている。一見するとキレイだと思うが、心の奥底で(やりすぎだよなぁ)とつぶやく自分がいることに気づく。

 オリオン座や冬の大三角形など、冬の季節の星空は見応えがあるのに、残念ながら自然の光と人工の光とは共存できない。人工の光が明るくなればなるほど自然光の輝きは遠のく。

 私にはイルミネーションで派手に飾られる社会はどこか胡散臭い。社会に巣食う闇を照らすどころか、逆に社会の闇を覆い隠す虚飾に過ぎないのではとさえ思ったりする。

 各自治体が個性を発揮し、町興しや地域興しを試すのはいいと思う。私の地元金沢でもいろいろ工夫すればいい。であればこそ、金沢の特色を活かすべきで、冬の雪が降る曇天がつづく日々、たまに晴れるひとときこそ、市中のイルミネーションを消し夜空の星々を堪能させてほしい。照明を消すことも立派な演出になるはずだ。

 人工的なイルミネーションも美しいが、星空の自然光のほうが遥かに美しいと私は思うけどね。