我が身第一主義

 世界の動向が非常に不穏で先行き不透明、政治も経済もかなり危うく、第三次世界大戦の気配さえ漂う。その一番の原因を一言で表すなら「分断」。世界中で異文化交流の大切な橋が次々と崩落し、そして新たに醜い壁が作られ始めている。

 近い将来、一触即発で世界が破滅的な状況に陥いることも十分予想され、現在なんとか慎ましく毎日の生活を送り平穏無事を願っている庶民も、予期せぬ事故、事件、災害だけでなく、失政からあっという間に難民として放り出されてしまうかもしれない。

 それにしても米国のトランプ大統領は現在を象徴する典型的な人物である。彼のような我儘な人物が登場したのは決して偶然ではなく必然だった。人の心には他人の不幸を見て我が身の幸せを思う気持ちが巣食うし、また実際、周りの束縛されている人々のお陰で我が身の自由を謳歌してもいる。

 米国第一主義とはすなわち我が身第一主義であり、自分の幸せや自由のためには他者が犠牲になっても構わないという考えだ。トランプの米国にとって、日本や韓国や中国など本当は重要ではない。米国が良くなるためにアジアの国々を利用したいだけだ。

 北朝鮮朝鮮民主主義人民共和国)と融和路線を進めようとするのも、米国へミサイルを飛ばすことがないよう脅威を取り払うため。北朝鮮が日本や韓国にミサイルを飛ばすことなど自分には関係ないと思っているかも。アジアの近隣諸国で紛争でも起きれば両者に米国の兵器を売ることができるからむしろ好都合。敵とか味方とか関係なく、米国が儲かり得すればいいだけのようにさえ見える。

 本当は他人が幸せにならなければ自分も幸せにはなれないし、本当は他人が自由にならなければ自分も自由にはなれないはず。こんなの当たり前のはずだが、残念ながら世の中の風潮は真逆に向いて突き進む。つくづく、未来への責任について現在の私たちは試されているのだと思う。

 私たちがトランプ的な人物を産み出したことを自覚しなければ。我が身第一主義が目立つのは、多くの人々の心の奥底に巣食っていた気持ちが噴出したせいで、ある意味正直なのかもしれない。だが、この偏狭な正直さこそが世界を破滅させる要因になる。