情報産業の裏側

 私たちの周囲には、人々の生活を支え、社会全体に欠かせないモノが溢れている。特に、コンピュータ関連のハードウェアとソフトウェアの比重は増し、今後それらは紆余曲折を経ながらも益々発展してゆくだろう。

 時価総額世界一を達成したアップルという会社の評価は非常に良好である。斬新なデザインとアイデア、時代の先端を走り新たな文化を想像する。しかもハードウェアとソフトウェアの両面からチャレンジしている。専門家だけでなく一般ユーザーからも高い評価を得て、まるで理想の企業であるかのようだ。

 しかし、やはり私たちはここで十分注意することが求められる。アップルが提供する製品、それはあくまでも表面的世界に過ぎないということ。

 中国のアップル製品工場では過酷な労働条件の下、自殺者が増加しているという。あるいはまた、アップルはアメリカCIAと協力関係を結び情報操作・管理に加担しようとしているらしい・・・。そんな情報を目にしたり耳にしたりすると、どうしてもアップルに対して不審の念を抱く。

 アップルやグーグルに限らない。情報産業だけでなく、世界の大企業・多国籍企業には疑念が常に付き纏う。重要なのは表面的な輝きに惑わされることなく、その裏側の世界への想像力を働かせること。

 コンピュータ関連の製品は従来の衣食住にまつわるモノとは本質的に違う。それには「情報」が常に付随して、完成品という認識は薄く、例えば一台のパソコンはひとつの製品だが、それが提供する情報で私たちは翻弄されるのだ。

 机や椅子やテーブルなどの家具は製品として完結し、それ以上でも以下でもない。だが情報機器類は、どう使うかよりも、どう使われるかにより、製品価値が以上にも以下にもなるだろう。私たちが操作していると思っても、実態は操作されていたのは私たちということにもなりかねない。

 どんな分野においても過信は禁物だが、情報産業においては特に注意しなければならないと思う。目の前の製品は、どんな経緯で、どんな背景を抱え、どんな役割を果たそうとしているのか、一度じっくり想像してみよう。