幸福ってなんだろう?

 映画館でレイトショーを鑑賞する。テレビ画面とは違う大きなスクリーンに映し出される物語に心身とも浸る。さほど期待してなかった作品が予想以上の出来栄えだったりすると、映画って面白い! と、嬉しくてたまらない。

 映画を観た後は、馴染みのBARでモダンジャズを聴きながらスコッチウイスキーを嗜む。そして、もう一度先ほど鑑賞した映画作品を振り返る。ジャズとウイスキーと映画がコラボレーションして、また新たな世界が展開されてゆく。なんて心地良いひととき。

 朝、目覚める。コーヒーとパンの食事を摂りながら新聞やテレビのニュースに眼をやると、どこかで大きな事件や事故が発生したらしい。だが、私の周りは静寂そのもの。昼の仕事の段取りを考える。特に問題はなさそうだ。今日も順調に行くだろう。

 仕事もひと段落。夕暮れスーパーへ買い物に出かける。肉、魚、野菜、好き嫌いはなし。何でも美味しく食べられる。寒い夜は熱燗の日本酒を飲みながら鍋物を中心とした食事だ。心が温まる。

 夕食の後は紅茶を淹れて、パソコンでネットサーフィンをしたり、DVDで映画や音楽を鑑賞したり・・・しかし、何といっても読書が楽しみだ。推理小説や文芸大作のつづきを読む。

 睡魔が襲ってきたらガマンせず、そのまま寝床に足を運び暖かい布団に包まれる。眼を閉じて、遠い宇宙の果てを想像しながら熟睡しよう。

 平穏無事な一日を過ごすことが出来ました。ストレスを感じることもなく、明日がまた楽しみです。ああ、それにしても、なんて幸福なんだろう――。
 
 ――ちょっと、まてよ。これが幸福なのか?
 ――いや、違う! これは本当の幸福じゃない。

 誰かを犠牲にして成り立つ幸福など偽物だ。お前の周りには誰もいないのか? 身近には誰かがいるだろう。身近な人々だけでなく、遠く離れた名前も知らない大勢の人々がいるだろう。大勢の人々は今なにをしているのだ? 大勢の人々は現在どんな状況にあるのだ?