キネマ旬報ベストテン

 2011年度・第85回キネマ旬報ベストテンが発表され、日本映画では新藤兼人監督の「一枚のハガキ」が、外国映画ではロマン・ポランスキー監督の「ゴーストライター」が、それぞれ第一位を獲得した。以下、選出された十位までの作品が紹介されている。これを見て私はちょっと驚いた。なぜなら私の鑑賞した作品がひとつも入っていなかったからだ。

 東京にいた頃、私は劇場で毎年50本ほど映画を鑑賞してきた。だから全公開作品の一部とはいえ、話題作にもそれなりに眼を通してきたつもりなので、キネマ旬報ベストテンの日本と外国のランクに少なくとも5〜6本は私の観た作品が常に入っていたものだ。ところが今回はまったくのナシで、選出された作品そのものにではなく、私の知らない作品(題名くらいは知っている)がズラリと並んだ事実に驚いたのである。

 予想はしていたが、とうとうこうなったか、との思いを強くする。繁華街の中心部にシネモンドというミニシアターが一館しかない金沢市で暮らす私にとって、鑑賞する作品はマニアックなものばかり。しかも東京で上映された作品は、数カ月から半年も経てようやく何本かがこちらで公開の運びとなり、どうしても本数と時間の格差が生じる。たとえば「一枚のハガキ」などはこの春先にようやくシネモンドで公開予定だから、私の鑑賞作品がキネマ旬報ベストテンに重ならないのは当然なのだ。

 つくづく都会と地方のズレを感じる。新宿の歌舞伎町でBARを経営していたとき映画が売りの店だったのでキネマ旬報には随分お世話になった。東京で映画を楽しんでいる限り、世界で最も歴史あるベストテンを掲載する老舗のキネマ旬報は身近だったが、金沢に帰郷してからというもの、公開される作品の数や上映時期の違いなども影響して、雑誌の存在は今の私からどんどん遠ざかる。これも仕方ないのだろう。

 とはいえ、映画への関心が薄くなったわけではないので、ベストテンだけでなく、キネマ旬報が所有する豊富なデーターベースを、これからも大いに利用し参考にさせていただく。キネマ旬報、これからもよろしくお願いします。


※「一枚のハガキ」はシネモンドで昨年11月26日〜12月16日間に上映されました。私の認識不足で、詳細は1月23日の「訂正とお詫び」で記述した通りです。