四季ではなく六季

 ここ数日、一気に冷え込み、真冬が到来したかのようだった。寒さは全国的だったらしい。しかし、また暖かくなりそうだ。季節の変わり目は徐々に変化するのではなく、寒暖の差が激しく変動することを実感する。

 春夏秋冬とか四季折々とか、あたり前のように一年を四つに区切るが、しかし振り返れば四季の変化だけでないことが分かる。春と夏の間に、初夏と梅雨がある。すなわち一年は、春、初夏、梅雨、夏、秋、冬、――の六季。

 初夏と梅雨は、春でも夏でもなく、趣が全く違う別世界。だから六季だ。

 私は一年を通して四月下旬から五月いっぱい、そして梅雨に入る前の六月上旬頃までの初夏が一番好きである。十月から十一月上旬にかけての秋も悪くないが、日照時間が長い初夏の方が断然いい。

 子供の頃、冬よりも圧倒的に夏が好きだった。北陸は金沢の曇天が長くつづく暗い冬が大嫌いだった。ところが、東京に出てからは冬が好きになり夏が大嫌いになった。冬はカラッとした晴天がつづき、夏は連日の猛暑で空気が重く息苦しく、太平洋側の東京は日本海側の金沢とは正反対なのだ。

 東京を離れ、金沢へ戻ってからは、冬が再び嫌いになっただけでなく、夏も近年の温暖化による不快な暑さのせいで、好きにはなれない。

 雪や霰の冬が終われば春が訪れる。待ち遠しいはずなのに、近年は花粉症のせいで春の季節は少しも嬉しくない。まったくやっかいな症状に罹ったが、花粉症になり実感したのは、春はつくづく埃っぽい。

 それにしても一年を通して、冷暖房を必要としない、ちょうどの季節が本当に短い。初夏の二ヶ月弱と、秋のひと月ほどしか過ごしやすい時期がない。あとはほとんど冷房か暖房のお世話になっている。中でも暖房期間は半年近くになるかもしれない。

 季節の変化は素晴らしいが、暑さ寒さはそれぞれ二カ月ほど、残り八カ月は冷暖房のお世話にならないちょうどの温度や湿度であってほしい。だが実際は、冷暖房の境がだんだん短くなっているような気がしてならない。