先のことなど分からない

 だいぶ前だが、「○○歳までに人間は何を成すべきか」とかいう本がベストセラーになり話題になった。20歳、30歳、40歳、50歳と10年ごとに区切り年齢とともに人間の成長を促す内容だったらしい。この手のハウ・ツー物は書店に行けば今も相変わらず大量に出回っている。それだけ需要があり、特に成功を夢見るビジネスマンを中心に売れるからだろう。中には「3歳までの幼児教育で人生が決まる」といった極端なものまで見かける。

 「成功をもたらす7つのアイテム」とか「成功するための知るべき△△の法則」とか、そんな似たようなタイトルのハウ・ツー物が本当に多い。ハッキリ言おう、私はそれら書籍のほとんどが胡散臭いと確信している。全否定するつもりはないが、その類の書籍は人生に役立つどころか人生観や世界観を限定し、窮屈で退屈な人生を送るための手引書のようなものだ。

 書物に「〜しなければならない」とか「〜すべき」とか文言があるだけで嫌になる。そんな私もついついそれらを口にしたり文章にすることがあり反省したい。くれぐれも上から目線の教訓を垂れる言葉遣いをしないよう気を付けたいが、ともかく人生なんて先は分からない、ということだけは訴えたい。

 他人の人生を端から見て勝手に解釈したり判断してはいけないとつくづく思う。20歳や30歳で人生を決めつけられたらそれこそ迷惑だ。50歳、60歳になろうと、いったいどうなるか分かるものか。80歳までの平凡な人生が、81歳になって突然豹変することだってあるかもしれず――勿論、あっていい。人生、先のことはまったく分からない。だからこそ面白い。

 ○○歳までに人間が成すべきことなどないし、成功をもたらすアイテムなどあるわけがない。ましてや、成功するための法則などインチキの極みだろう。そんなものに捉われ惑わされる人生なんてまっぴら御免だ。