老後の生き方

 人間も70代、80代ともなれば、身体のどこかがおかしくなるのは当然で、たとえ自覚症状がなくても医者に診てもらえばあれこれ指摘され、問題部分の治療を勧められる可能性は高い。

 健康志向に捉われ過ぎて医者の勧告に従い、病院通いを始めたり薬を処方されたりするのは、一応安心できるとはいえ、しかしよくよく注意しなければと思う。医者も商売だから稼ぎたい、だから健康を口上になんとか病気を見つけようとするに違いないのだ。

 繰り返すが、どんなお年寄りも日々の生活で特に問題はなくても、いざ精密な健康診断を受ければ何か異変は見つかるだろうし、もしその何かのためにいつもの生活が軌道修正させられ、高額の治療費を払うようなハメになるとしたら…。

 「人生100年時代」を迎え健康に気を遣うのは大切だが、しかし人生、長生きを目的にするようでは本末転倒。病院通いに時間を費やしたり、薬漬けの毎日を送るとしたら、そんな人生はあまりに寂しい。残された時間、たとえ短くなってもなるべく好きなことに専念すべき。

 ところで、人間の脳細胞は二十歳くらいを境に、その後時間と共にどんどん死滅してゆくという。だからと言って死滅した脳細胞にこだわり落ち込む必要など全くなく、まだ元気な脳細胞をうんと活用すればいいだけのこと。

 どんな人間も平均すると自分の脳細胞のほんの僅かしか生涯に活用しない、と本当かどうか知らないがどこかで目にしたことがあり、天才と呼ばれる人たちでさえ脳全体の一部分だけの活用らしい。

 さすがに凡人より天才は脳細胞の活用範囲は広いだろうが、要は人間はほんの僅かしか脳を活かしていないことになり、これが「生きてる間に頭を使わないと損」と言われる所以なのだろう。

 脳細胞に関する以上の言説は都市伝説との噂…ただ、脳細胞に限らず身体全体に当てはめ前向きに考えるのは良いかもしれない。多少ガタがきた小さな部位の治療のために残りの人生の大半を費やするより、残った健全な大部分のさらなる活用を考えた方がいいということ。

 ただし、これはあくまでかなり年を取ってからの言い分、若い時はやはり心身全体の健康に十分注意すべきなのは当然だ。