TPP問題に隠される本質

 原発普天間、消費税、年金、財政・・・そしてTPP(環太平洋パートナーシップ協定)、大問題が目白押し、いったいどうしたらいいのだろう。ひとつの問題が解決すると、新たな問題が生じるという単純な直列的構図ではなく、幾つもが並列して同時進行中というやっかいな状況にある。たったひとつの問題だけでも右往左往するのに・・・。

 名称が違うのでそれぞれ別々のように見えるが、根本において公平性が問われるという意味で共通している。表面的なものだけで判断するわけにはいかない。

 TPP以外の諸問題は、都会と地方、富裕層と貧困層、高齢者と若者・・・等々、対立構造が分かりやすく、公平性が疑われ格差をストレートに訴えることができる。だが、TPP問題は諸国の事情や各業種の思惑が複雑に絡み合い、政党レベルでも与党と野党の対立軸だけでは捉えきれず、与党内や野党内がすでに分裂状態だ。

 TPP問題を考えるとき、今後の世界はどうあるべきか、の長期的視野が欠かせないはず。ところが、賛成する側も反対する側も日本だけしか視野にない。農業、工業、医療、金融と、20項目以上について賛否両論が渦巻いているが、結局は、自らの損得勘定に終始している。本当にそれでいいのか。

 10月31日に地球の人口が70億人を突破したらしい。今世紀半ばには100億人を地球は抱えるだろうと予想される。日本や米国の生活水準を100億人が目指したら、地球は何個あっても足りないことぐらい大勢の人々は分かっている。

 環太平洋10カ国のうち日本と米国だけで90%以上占めるGDPから、TPP問題を日本対米国の構図に押し込めがちだがそれは違うだろう。現時点で私はTPP参加に反対だが、しかし、国力を維持させたい国益重視のための反対は説得力に欠ける。

 世界の国々を平準化させるため関税を撤廃し、人々の自由と平等が国境を越えて実現するなら日本や米国は弱体化してもいいと、それくらいの覚悟で本来はTPPを推進すべきかもしれない。

 繰り返すが、今後、多くの国々が日本や米国のような生活水準を実現させたくても不可能である。「先進国」と「途上国」の現状を是認したまま、米国が主導する自衛のためのTPPなら、もちろん大反対である。

 つまり、TPPこそが広範な格差問題を孕んでおり、一国のレベルで賛否を問う事柄ではなく、つくづく世界的視野で問わなければならないのだと痛感する。