ギリシャ危機の背景

 ギリシャの財政が破綻寸前で、債務不履行にでもなればヨーロッパのみならず米国や日本にまで波及し、全世界が経済危機に陥るかもしれない・・・と、連日ニュースで取り上げられている。観光が主な収入源のギリシャだが、なんと公務員数は国民の25%、税金逃れは日常茶飯事だそうな。「ギリシャ人は働かない」「ギリシャは支援された資金を食い尽くすだけで返済する気はない」等々、悪いイメージが固まってしまった。

 先日、たまたま見ていたワイドショーで、有名な女性評論家が「ウォール街のデモは支持できるが、ギリシャのデモには共感できない」と発言していたが、この意見は世界情勢に関心がある多くの人たちにとってそれなりに説得力があるかもしれない。経済格差是正を訴える貧者たちのデモと、ロクな仕事もせず贅沢に耽りたい怠け者たちのデモは、同じデモだが正反対、というわけだ。

 財政赤字の隠蔽が明らかになるなどギリシャ国内は確かに問題だが、しかし真の実態は経済のグローバル化で弄ばれた小国の悲劇ではないだろうか。本当の悪党から眼をそらすわけにはいかない。

 悪の総本山は、やはりウォール街の金融資本にあると思う。新自由主義を存分に利用した彼等はマネーゲームを繰り返し、一企業どころか一国の命運も左右するほど力を得た。あまりにカネを稼いだがゆえに潰すにも潰せなくなり、彼等を温存せざるを得ないことから経済不安の要因がさらに増大する。前大統領ブッシュ時代に経済格差は加速したが、危機の発端はレーガン元大統領にまで遡るらしい。

 金融資本主義の最大の不幸は、どんなにカネを儲けても安心できない病魔に侵されることだ。おそらく現在の世界で、ある意味、ウォール街の支配者ほど長期に渡り不安と恐怖に苛まれ苦しんでいる人種はいないだろう。どんなにいい服を着て、どんなにいい車に乗って、どんなにいい住宅に暮らし、どんなに贅沢をしようともそれは表向き。彼等の本心は競争に負ける不安と財産を失う恐怖で慄いている。彼等はカネという麻薬の重症者であり、もはや救いようのない大病を患っているのだ。

 ソ連が崩壊したとき「社会主義は敗北し、資本主義が勝利した」とオメデタイ論調が世間を賑わせたが、とんでもない。ソ連が崩壊したと同時に資本主義は奈落の底へ転がりはじめ、わずか20年ほどで破壊されようとしている。