トルコとブラジルの反政府デモ

 トルコの首都イスタンブールを中心に、エルドアン首相の独裁的政治手法に反旗を翻す大規模なデモが連日繰り返された。少し遅れて、ブラジルでもサンパウロリオデジャネイロの大都市を中心に、物価上昇や議会の腐敗に抗議するデモが発生、全国的に拡大しつつある。

 この二つの国が注目されるのは、トルコのイスタンブールが2020年度オリンピック招致の最右翼で、片やブラジルは2014年度サッカー・ワールドカップの開催を控えていること。そして、両国で起きた反政府デモの共通点は、オリンピックやワールドカップより、貧富の格差をなくし自由で平等な社会の優先、すなわち民主主義を求めていることにある。

 公正な精神を育てる手段としてスポーツの祭典が機能するならいいが、しかし残念ながら、商業主義に乗っ取られ強欲資本主義に弄ばれているのがオリンピックやワールドカップの現状なのだ。それら巨大イベントを開催することで、業者の汚職がはびこり、自然破壊が進み、無駄な税金が使われ、かえって格差が広がるかもしれない。トルコやブラジルの民衆はスポーツの裏側にはびこる負の側面をちゃんと理解しているのである。

 2020年度オリンピックの開催地がどこになるか分からないが、「オリンピックよりも民主主義を」と訴えるイスタンブールの民衆の声を、東京でもマドリードでも、その他の都市でも真剣に考えなければならないはずだ。ところが日本では、反政府デモでイスタンブールの治安が心配だから、これで東京にオリンピック招致のチャンスが広がった、などと単純に喜ぶ声がかなり大きく、こんな日本人の精神構造が本当に情けない。

 ブラジルではワールドカップに備えて新たな競技場を12ヵ所も建設するらしい。なんで新たに作る必要があるのだろう。サッカー大国ブラジルなのだから既存の施設を使えばそれで十分ではないか。古くなったのなら修理・保全すれば済むだけのこと。見栄のために税金が無駄使いされるのが許せず、「もっと医療や教育に税金を」と訴える民衆の怒りは当然である。

 近年経済発展が著しく、先進国の仲間入りを果たしつつあるトルコとブラジル。この両国で、まるでオリンピックやワールドカップを拒絶するようなデモが発生した事実は意味深く、IOC国際オリンピック委員会)やFIFA国際サッカー連盟)の責任はとても重い。